【Pick Up Owner #18】松本佳奈|表舞台での発信を続けられるのは、肯定してくれるファンがいるから

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2022/06/17 15:00

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千葉県木更津市の里山の古民家にて3人の子育てをしながら活動を続けるシンガーソングライター・松本佳奈。音楽活動と並行してアートを通じた街づくりを目指すプロジェクト「art of dialogue」を立ち上げ、木更津市文化課主催の「芸術文化に親しむまちづくり振興事業」にも企画協力している。


都内から地元・木更津へと拠点を移した理由や「art of dialogue」に込めた想い、「かなりコアなファン向け」だと語るオンラインコミュニティについて、さらには「18歳にして500万円の詐欺被害に遭った」という衝撃の過去まで、気になるその生き方を探った。




松本佳奈 オンラインコミュニティ まつかな食堂 - Bitfan



常に歌ったり踊ったりしていた子どもがそのまま大人になっちゃったタイプ

ーーー それでは、自己紹介をお願いします。


木更津市出身、ピアノ弾き語りシンガーソングライターの松本佳奈です。よろしくお願いします。


ーーー ご自身で曲を作って歌うようになった、最初のきっかけについて教えていただけますか。


初めて曲を作って歌ったのは幼稚園の頃だったと思います。たぶん4、5歳ぐらい。曲を作るというよりは、自由に遊んでいる感じかな。母がピアノ教室をやっていて、私も3歳から習っていました。


本を読むのもすごく好きで。しょっちゅう図書館に連れていってもらっては何冊も借りて読んでいましたね。「人魚姫」とか、アンデルセン童話が特に好きでした。


そこからだんだん自分で物語を書くようになって。お姫様や動物を主人公にしたお話を作っていました。画用紙とかノートに、挿絵も自分で描いて。そういう流れの中で、書いた詩に曲をつけて歌うようになっていったと思うんですよね。


ーーー すごいですね、小さな頃からクリエイティブな遊びをされている…。


自分の子どもを見ていても思うんですけど、小さい頃ってみんなクリエイティブなんじゃないかな。こっちが何も言ってないのに突然替え歌作ったり(笑)常に歌ったり踊ったりしているじゃないですか。私はそれがそのまま大人になっちゃったタイプで。

ーーー 今はフリーとして活動されていますよね。過去に事務所へと所属されたりはしていたのでしょうか。

音楽事務所に所属したことは無いです。レコード会社のプロデューサーさんとアルバム制作していた時期はありますが、マネジメントは自分でやっていました。2015年頃から本格的に「自分はどう活動していきたいのか」を見つめ直して、改めて自営業として動き始めた感じですね。





東京での挫折から、地元・木更津へ

ーーー 当初は都内を拠点に音楽活動を始められたということですが、途中で地元である木更津に戻られましたよね。


東京での活動に挫折したんです。きっかけとしては、2014年のワンマンライブと、その年に入院したこと。


ワンマンは渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで開催しました。自分にとって結構な挑戦で。まず、集客の不安。300席というキャパシティを埋められるのか、と。


セルフプロデュースのライブって、ライブ自体の構成を考えるのとは別に、集客のための宣伝、チケットの値段設定や売り方の決定、リハーサルスタジオの手配など、自分でやらなきゃいけないことが山積みなんですよね。そしてスタジオ代、サポートメンバーや手伝ってくれた人への謝礼、会場費などは全部自費。特に会場費は、300席ともなると三桁の額がポンと出て行く。


それが結構なプレッシャーで…チケットが売れないとペイできないですから。

結果、地元木更津はもちろん、全国各地からファンの方が駆け付けてくれて満席で開催することができました。でも手元に残ったお金が本当に僅かだったんですよ。実質赤字です。これでどうやって生計を立てて行けばいいのだろうかと。お金がすべてじゃないとはいえ、お金がないと活動していけないのは事実なので。



渋谷duo MUSIC EXCHANGEでのライブの様子


ライブを開催すること自体は収益にならない。だからグッズを販売したり、映像を後で販売したりするんですよね。でもそれって楽曲制作や演奏とは全く別分野じゃないですか。肝心の音楽が後回しになる感覚もあったし、あの規模のライブを一人で切り盛りするのは難しかったと今は思います。先に進むには、役割分担できるチームを作らないと無理だなと。


ーーー そうですね。セルフプロデュースで活動するということはつまり、アーティストとスタッフ、全ての思考を一人でこなさないといけない。


そうなんです。2014年頃はセルフプロデュースが主流になっていく過渡期だったと思います。



東京を拠点にしていた頃のアーティスト写真


そのワンマンライブの後、持病が発覚したんですよ。色々と考えすぎたり、動きすぎて無理が祟ったんでしょうね。入院することになりました。なんだか色々疲れちゃって…果たしてこのまま東京でガツガツと「次は500人」「その次は1,000人」と増やしていくのが本当に私のやりたいことなのかがわからなくなりました。


なぜ300人ワンマンに挑戦したかというと、29歳で、年齢的焦りもあったんですよね。なんとなく30歳までに大きく飛躍しなければ!世間に認められなければ!みたいな(笑)それで、身の丈以上に自分を大きく見せたかった部分もあったなと。


海辺の総合病院に入院していたんですけど、波の動きや飛んでいるトンビをただぼーっと眺めている時間がすごく良くて。のんびり自然の中で暮らしたい思いが強くなりました。音楽活動も、もっと自分のペースでやっていこうと。それで拠点を地元の木更津に戻す決意をしました。



病院の近くの海岸にて


ーーー 一旦木更津市内に戻られてから、今度は生活拠点を里山に移されました。里山での生活はやはり都会とは違いますか。


空が広くて、夜はシーンと音がするくらい静かですね。四季折々の草花が順番に咲いて、旬の野菜が採れて、気候が少し変わると見かける虫の種類も変わって、カエルの声がして、雨が降りそうな時は匂いでわかる。ナメクジやカエルが家の中に出るのはちょっと嫌ですが(笑)五感で四季を感じることが増えたのは嬉しい変化でした。


野生の感覚に近くなっているのか、物が腐っているのも臭いですぐわかるんですよ。賞味期限より臭いで判断しています(笑)だんだん鋭くなってきている気がします。


科学的なエビデンスがあるかはわからないんですが、人間の耳に聞こえる音の幅のうち、都会ではある一部分しか聞こえていないそうです。でも自然の中に行くと、例えば葉っぱが擦れるざわざわとした音、虫や鳥の声とか、上から下まですごく幅広く聞こえていて、その場にいるだけで体の緊張がゆるむ効果があると聞いたことがあって。


ーーー mp3の音源とアナログレコードの違いみたいなものでしょうか。


そう、耳で聞いているレベルではわからないかもしれないけど、体は感じているみたいな。都会暮らしも好きでしたけど、自然のそばにいるほうが性に合うなと今は思っています。


ーーー 素晴らしい環境ですね。逆に、こういうところは不便だなって思うポイントはありますか。


基本、車じゃないと移動できないことですかね。ちょっとゴミ出しに行くのにも車で行かなきゃいけない…歩くと片道20分かかるので(笑)


私が住んでる地区は14世帯しかいないんです。隣まで500mとか離れているし。年代もうちがダントツで若くて、次はもう50代。結構高齢化しているのに、それでも年中行事として草刈りや神社の清掃があって。その草刈りもまた、歩いて30分の距離をひたすらドブに沿って刈るんですよ!


あと回覧板が週に1回くらい回ってくるんです、これは生存確認も兼ねているのかもしれないけど(笑)都会だとないじゃないですか。


高齢になってからのほうが都会は便利なのかも。草刈りしなくていいし、車の運転ができなくなっても歩いていける範囲になんでもあるし。


ーーー ゴミ捨てに車必須なのが個人的に衝撃です(笑)


歩きで行ったことはないですね。近所のおばあちゃんは台車に乗せてゴロゴロ20分かけて行っていますよ。近いほうが絶対に便利です(笑)




芸術は新しい発見に繋がる、だから芸術って面白い

ーーー 音楽活動の他にも、「art of dialogue」というアートプロジェクトを主宰されていますよね。プロジェクトにかける想いを教えていただけたらなと思います。


「art of dialogue」というのは「対話のアート」という意味で。「価値観の違う人同士がアートを通じて対話していくこと」を目的としたプロジェクトです。今は主に木更津市で、人それぞれの表現が尊重されるような出張アートワークショップの企画運営をしています。


私は小さい頃から絵やピアノや文章を書くのが好きでしたけど、学校に行くと「自由にやる」のではなく正解を当てて、それによって評価がつけられる。例えば国語で「この登場人物の気持ちを答えなさい」っていう問いに「お腹が空いていたんじゃないかな〜」と答えても、「それは違います、文章の中から答えなさい」ってなるじゃないですか。


芸術に正解なんかないと思うんですよね。人それぞれ、感性によって捉え方が変わってくるものだから。人生を豊かにしてくれたり、見方を変えてくれたり、新しい発見に繋がったりするのが面白さだと思うので。



すでに絵やピアノ、文章を書くことが大好きだったという幼少期


ーーー 評価されない面白さがあると。


うちの母も芸術肌で、絵を描いたりオペラを歌ったりするんですけど、私とは価値観が全然違って(笑)母がいいと思うものと私がいいと思うものは食い違うことが多かったんです。


絵を描いても母が綺麗だと思う色で塗らないと、塗り直されちゃうんですよ(笑)私が赤がいいなと思って塗ると「いや青の方がいいでしょ!」と青にされちゃう。学校の夏休みの宿題でポスターを描いて、あとちょっとで完成のところで寝て起きると、翌朝母が仕上げていたりして。

しかもそれで賞をとっちゃうんですよ。こっちは「自分で描いたんじゃないんだけどな…」とモヤモヤしてるのに、母は「やっぱ私ってすごいよね!」って喜んでるっていう。


ーーー いいキャラされてるお母様ですね(笑)


もうね、自己肯定感が高すぎますよね(笑)

1歳の時に両親が離婚して母と祖母との3人暮らしだったんですけど、両者とも私への干渉が強めで。勉強しなさい、テストで100点取りなさい、いい大学行っていい企業に就職しなさいみたいなタイプでした。芸術に関しても、技術の上達を目指しなさいという感じで。そんな家庭だったからか、「自分がいいと思ったものを、自分で表現したい」気持ちが常にあって。だから今も曲作ったり文章書いたりしているのはあるんでしょうね。


芸術が評価の対象になることに対するモヤモヤを抱いたまま、大学時代に「レッジョ・エミリア・アプローチ」(※)と出会いました。


(※「レッジョ・エミリア・アプローチ」:イタリアのレッジョ・エミリア市で生まれた独自の教育システム。アートを通じて子どもの個性や主体性を尊重することを特徴としている)


大学があった西東京でレッジョのアートワークショップのボランティアを募集しているからやらないかと誘われて、面白そうだから参加してみたんです。

レッジョ・エミリア市は第二次世界大戦の後に街の中に残った戦車や武器を売って、そのお金を子どもたちのために使おうと、イタリアで初の公立の幼児学校を作った都市なんです。…という話は後から知ったんですけど(笑)とにかくそのワークショップが面白くて。


4~5歳くらいの子どもたちと森に入って、聴診器で木の音を聞いたり、虫眼鏡で葉っぱを見てみたり、目隠しをして風を感じてみたり。それから、各々がピンときた花や実を採取して室内に戻って、その素材を使って森を表現するんですけど、出来上がった作品を見ると人によって目に映るものが全然違うんだなってわかるんですよ。

どんぐりが好きな人、花や虫が好きな人、風が好きな人。人によって心惹かれるものが全然違うのがわかるんです。同じ森に入ったのに、全然違うものが出来上がる。




レッジョ・エミリア・アプローチは「100人いれば100通りの考え方があって、100通りの表現の仕方がある」という考えがベースになっているんですけど、それを目の当たりにして「人それぞれ、こんなに違っていいんだ」と。私が求めてたものはこれだったと思いました。みんなで同じものを作ってその出来を点数で評価されるのではなくて、そもそもみんな違うものができるんだから、評価なんてできないんですよ。


こっちは粘土に木の枝さしてるし、こっちはコップにどんぐり詰めてるし(笑)みんな自由で、誰も否定されなくて、それいいね面白いねって、それぞれの価値観が尊重されているのがすごく心地よくて。


それから10年くらい、音楽活動と並行しながら構想を練って、2019年にart of dialogueの前身となる市民団体「リビングケア」を立ち上げて、アートワークショップの企画を始めました。


ーーー 日本の一般的な芸術教育って「みんなで森に行って、どんぐりを持って帰ってきて、その絵を描きましょう」のように画一的ですよね。何をしてもいい、ダメ出しをされないのなら、アートに対する考えが根元から変わりそうです。


そう、上手く描かなきゃいけないというプレッシャーや評価がなければ、ただただ絵の具を混ぜたり、色んな種類のクレヨンの質感を試したり、実験するようにアートで遊べると思うんですよ。絵とか描かれますか?


ーーー 全然。下手!って言われてから描けなくなっちゃいました。


あらら…勿体無いですね…。今、木更津市で開催しているアートワークショップは、親子対象ですけど、大人と子どもで部屋を分けてそれぞれで同じ制作をしてもらうんです。最初、大人からはほぼ100%「苦手です」と言われます(笑)でもいざ制作が始まると、大人の方が集中してのめり込んでいるんですよね。




何も考えずボールペンを手にとってぐるぐる丸を描いていたような時期って誰にでもあったはずなんですけど、どこでみんな苦手になっちゃったのかは…日本の闇です(笑)


ーーー 小さい頃はみんな自由にお絵描きを楽しんでますもんね。自分もそうでしたけど、だんだん絵の上手い子、下手な子みたいな空気が出てきちゃって。


だって「遠足の絵を描きましょう」とか課題を出されても、よく考えたらすごくレベルが高くないですか?「遠足の思い出を描こう」と言われても(笑)


それを例えば、色で表現してみる。持っていった水筒や、出会った動物の色を混ぜてみる。別に「遠足の色」ができなくたっていいし。大体「遠足の色」ってなんだよって話で(笑)よくわからないけど、こういう感じかな?とやってみて、混ざった色を紙に流してみたら面白かった!終了!でもいいんですよね。


「こうでなければいけない」があるから、最初の一歩が出なくて実験できない、失敗できない。それがもったいないなと思って。描きたくなったら誰でも気軽に描けて、評価されない場所がほしいし、作りたいんです。


ーーー 評価をつけてくる先生ポジションがいない空間ですね。


そうですそうです。先生も同等というか、一緒に作っているだけ。レッジョ・エミリアでは学校に必ず芸術専門家(アトリエリスタ)がいて、「こういう素材もあるよ」とか「これも使いたかったら使ってね」と提案してくれるけど、決して指導や評価はしないんです。


将来的には商店街の一角を借りて、壁一面に作品を展示したり、いつでも誰でも絵の具やクレヨンで遊ぶことができたり、持ち寄った本で作った文庫があってのんびり本を読みながらお茶が飲める場所を作りたいです。授乳やおむつ替えできるスペースもあって、赤ちゃん連れでも気軽に立ち寄れると良いなと。





表舞台に立つのは、そこに人の反応、コミュニケーションが生まれるから

ーーー これまで、活動をもうやめたいなと思うようなことはありましたか。


やめたいと思ったことはないですね。向いてないからやめろと言われたことはあります(笑)創作自体は生活の一部になっているので、やめるやめないの話じゃないんですよね。


ただ、基本的に自分の世界に篭って創作してきたタイプなので、他人を頼ったり、チームを動かすのは苦手で、悩むことはあります。ライブの企画やアルバム制作って、どうしたって複数の人が関わるじゃないですか。プロデューサー、エンジニア、ミュージシャン、会場とのやり取りとか。今でこそ気心知れたメンバーでやれるようになりましたけど、最初のうちは難しかったです。


真剣にものづくりをしようと思うほど社交辞令では済まなくなるというか、本音で関わらざるを得なくなりますよね。お互いナーバスになっていると言い方ひとつで誤解が生まれたり。そんなやり取りで大喧嘩になって、疎遠になっちゃう人もいました。でもしばらくしたらまた繋がることもある。縁は切れたけど「お互いより合う場所が見つかってよかったな」という場合もあるから、ぶつかるのも一概に悪いことではないと思っています。


あと、活動規模が大きくなるほど人に頼らなければいけない面が出てくるので、その中でどこまでを自分でやって、どこから他人に頼むという線引きは、何年やっていても本当に難しいです。上手に人を頼れるようになりたい(笑)これはずっと考えていかなきゃいけないところだなと思います。


銭湯でのライブ模様


ーーー ありがとうございます。活動を続けるモチベーションというのもここでは聞きたかったのですが、もうモチベーションどころじゃなく「生活の一部」という感じですね。


誰にも頼まれてもないのに曲を作ったり絵を描いたり、そういうことをし続けている大人はみんな変な人なんですよ(笑)それがもう日常で特別なことでもなくなっていて。その上、人前に出て行って歌い出すなんていうのは、私も含めて、世間的に見れば変な人ですよ(笑)勝手にやっているだけなので、そのモチベーションとはなんぞや、という話で。


ーーー 確かに(笑)


でも、表舞台に立つというのはモチベーションがないと続けられないかなと思います。作品を否定されたり、それこそ人との関係の中で悩みながらも、音源作って販売して、告知して集客してライブして、ブログやSNSで発信し続けられるのは、やっぱりファンの方の反応があるからですよ。


新曲を発表したときに「この曲好きです!」って言ってもらえたり、ただただ自分のために書いた曲に共感してくれる人がいたりすると、「同じことを思っている人もいるんだ」と嬉しくなったり。じゃあもうちょっと続けてみようかな、と。


ネガティブな反応もありますよ。ムムッとするコメントもあるし(笑)でも、アンチが付くってことはファン以外にちゃんと情報が届いているってことなんですよね。


文句言われたくないんだったら、誰にも発表せずただただ家で曲作っていればいいわけですし。人前で発表するってことは、そこにコミュニケーションが生まれるってことですから。


とか言いつつ私は繊細なので(笑)「いいなと思って黙っている99」より「大声で文句を言う1」に引っ張られがちです。それでも続けて来れているのは、ファンの方のお陰様だなと思っています。




ファンクラブは相当コアなファン向け。何しろ…

ーーー ここからはBitfanで運営していただいている「まつかな食堂」についてお伺いしたいと思います。なぜオンラインコミュニティを始めようと思われたのですか。


2017年からファンクラブ自体は立ち上げていたんです。ただ、お金の管理とかライブ配信とか、会員限定ブログもすべて一元管理したいなと思っていて。そんなサービスを探していた矢先にBitfanさんが出てきて、これだ!と。


ーーー なぜタイトルは「まつかな食堂」なのでしょうか。


立ち上げからずっと「まつかな食堂」なんですけど、私、ご飯を食べるのがすごく好きで!人が美味しそうに食べている姿を見るのも好きで、音楽だけで暮らせなかった時代はずっと飲食店でアルバイトをしていたんです。


「まつかな食堂」のイメージは田舎の小さな食堂です。カウンターで飲んでいる常連客もいれば、サッと食べて仕事に戻る人もいる。座敷で家族連れがくつろいだり、食べ終わった子どもがおもちゃで遊んでいたり。色々な人がそれぞれの楽しみ方をしていますよね。それで、「ああ、おいしかった。また来るね」と帰っていく、その雰囲気が好きで「食堂」にしたんです。



ーーー なるほど、なんで「食堂」なんだろうと不思議に思っていました。「〇〇ワールド」みたいな方も結構多いのに「食堂」なんだと。


「みんなで一緒に何かしよう!」よりも、各々が自由にしているのが好きなので、適度な距離感みたいなものを大切にしたくて。


元々、ファンクラブを作るのもすごく迷いがあったんです。どんなに好きなものでも、時間が経つと心変わりしたり、また再燃したり、波があるじゃないですか。ファンクラブとして固定してしまうと「ファンでいなきゃいけない」みたいな…義務っぽくなってしまうんじゃないかと思って。「もう別に松本さんの音楽にピンと来ていないんだけど、やめづらくて惰性で入ってる」とか嫌だなと思っていて(笑)出入り自由、風通しよくしておきたい。


「あの常連さんしばらく来ないな~」でもまた3年ぐらい経ったらふらっと来る、それぐらいがいいなと思って。そんなイメージもあって「食堂」にしています。あ、もちろんずっと継続してファンでいてもらえることは嬉しいですよ(笑)


ーーー ブログを様々なところで書かれていますよね。公式サイトやBitfanはもちろん、声でもstand.fmでとか。各種SNSも使われていますし、どのプラットフォームでどれを書くか、しっかりと考えながらやられているのですか。


正直、立ち上げた時期がバラバラなので統制しきれていないというのが現状なんですけど。プラットフォームごとに内容を変えるのは意識しています。


Instagramは日常を中心に。繋がってくださっているのも育児中の方が多いので、子どもたちとの写真をストーリーズに載せることが多いです。


Twitterにも育児のことは書きますけど、こちらはぼやきというか、「寝る直前におもちゃ箱全部ひっくり返されるのきつい」みたいな投稿多めです(笑)SNSの中ではTwitterが一番合っている気がします。140字っていう制限があるのも好きです。


Facebookは、アーティストページと個人アカウントの両方持っているんですけど、ページは宣伝中心。個人の方ではいいなと思った記事をシェアしたりしています。


ブログはameba owndとBitfanの会員限定ブログの2種類で使い分けをしていて。

ameba owndには節目節目の挨拶や宣伝。会員限定ブログにはこの先決まっている仕事や新曲のデモを載せたり、未発表の情報を書いています。




ーーー 会員限定でZoomを使った企画もされていましたよね。


月に一度、トーク中心のライブ配信番組をやっていて(「松本佳奈の、気ままにひとり時間」)番組自体はYouTubeでどなたでもご覧いただけるものだったんですけど、終了後に会員限定の反省会と銘打ってZoomしていました。配信中はコメントを拾えないことも多いので、終わった後に顔を合わせてゆっくり話せるといいのかなと。「今回はこういうお題だったけど、次回はどうしようか?」みたいな相談をしたりもしていました。


ーーー お疲れ様会みたいな…


そうそう、そんな感じです。Bitfanに入ってくださっているファンの方たちは、一番近いところの仲間というか戦友みたいな感覚で。一緒に活動を作ってもらっていますね。


ーーー 会員のみなさんはちょっと裏側に参加している感じ。


SNSで発信したことの裏話とかね!妊娠していた時、しばらくSNSの更新をしていなかったのですが、会員限定ブログでは「実はイボ痔がひどくて歩けません」と書いていたり(笑)推しのイボ痔の話なんか誰も聞きたくないだろうけど(笑)


ーーー 実はその記事、目にしていて。詳しく聞いていいものかと悩んでいました(笑)


妊娠中って予想だにしないことが次々起きるんですよね。そもそも人生がそうじゃないですか。素のままを書いてファンが離れるんだったらそれは仕方ないなという覚悟で(笑)

大体、月額会費1,200円って決して安くないので、相当コアなファンの方が入ってくれているなと思いますよ。イボ痔にも動じないコアファン(笑)


ファンクラブを立ち上げたことで、ライブの会場費やサポートメンバーへの謝礼など、しっかり予算を組めるようになったのはとても大きくて。本当にありがたいです。


ーーー そもそも収入がないと、活動自体が成り立たなくなるわけですからね。そこは大事なポイントだと思います。



お疲れの方は食堂へどうぞ

ーーー 今後、ファンの方に向けてやってみたいことはありますか。ファン限定のイベントだとか、会員だけの配信だとか。


「リアルまつかな食堂」をやりたいです。木更津ですけど、お店を借りて私が料理を作るので、実際に食べに来てもらいたいなと。遠方で来れない方にはBitfanのライブ配信機能を使って配信で見てもらえるようにして。今年中にはやりたいなと思っています。


ーーー 期待大ですね!


がんばります!


ーーー 今後の音楽活動についても、やりたいことや目標があれば教えてください。


やっぱりこの2年というのは、「今後どうしようかな」を考えるタイミングでした。音楽に限らずほとんどの方にとってもそうだったと思うんですけど。


今後も千葉に拠点を置くのは変わりませんが、「千葉だけでやっている」のも違うかなと。千葉には千葉のコミュニティがあって、そこは居心地もいい。けど、アーティストとしてはもっと曲を作って、広い範囲でライブをしていく、ということをしっかりやっていきたいです。


都内でも地方でも、大きすぎない…100人とか150人くらいのキャパシティで、音の鳴りがいいホールをまわってきたいんですよね。弦カルテットも入れたい。ライブの質を高めていきたいなと思っています。


これまでも色々なところで歌っていて。田んぼとか…


ーーー 田んぼ!?


そう、自分でスピーカーを持っていって、田んぼをバックにして(笑)子どもも駆け回れるし、いいんですよ。ただ、ホールでやるからこその音の響きも大事にしたくて。新曲もしばらく作れていないので、一新したいです。




ーーー 一新!アルバムの予感ですね。


2020年にアルバムをリリースしたんですけど、ライブができない時期だったので、まずはそれを持ってツアーに行きたいですね。


ライブでやっていない曲をいきなりアルバムに入れることができないタイプなんですよ。ライブで練っていきたいから、とにかく曲作って、たくさんライブして、アルバム作って、ホールコンサートを企画したいですね。自分にできることや向いていることを活かして、フルで表現活動していきたいです。


ーーー 最後にファンの皆さんに向けて一言お願いします。


はい。世間一般で言うと引かれちゃうような経歴も受け入れてもらっているファンの方には…


ーーー そんな経歴でしたっけ!?


だって私を調べると「松本佳奈 離婚」とか出てきませんでした?(笑)


ーーー …サジェストに色々出てくるなとは思いました(笑)


バツイチだったり不登校だったり、すーっとレールを進んできた人からしたら「聞いちゃってごめんなさいね」みたいな人生で。母子家庭で育って、不登校で、離婚もしていて…音楽事務所の詐欺にも遭っていて、とか。


ーーー 詐欺?


そうなんですよ!私、18歳の時に500万円くらいの被害に遭っているんです。軽い気持ちで音楽事務所のオーディション受けたら、たまたま大規模な詐欺グループがやっていた罠だったという(笑)それもあって事務所はちょっともういいかなって。


でも、私は思いっきり詐欺だったからまだよかったんですよ。グレーのところもあるじゃないですか?詐欺に遭ったことや不登校のことも隠さず言っているのは、相談できる窓口になれたらという気持ちもあるんです。

詐欺に遭おうと思って遭う人はいないし。本人がどんなに気をつけていたって、向こうもプロですから。まさに今お金取られそうになっています、みたいな人がこのインタビューを読んで「もしかしてこれは詐欺なのかな」と疑うきっかけになったらいいなと(笑)


ーーー 本当に書いて大丈夫なんでしょうか(笑)


全然大丈夫です。何か問い合わせあったら「詳しくは松本さんに聞いてください」って投げてもらえれば(笑)


今の世の中って悩みを気軽に吐き出すこともできないというか。何か言うとすぐ否定されたり、思いがけず炎上したり。逆に無反応というのも堪えたり。いちいち反応を気にしてSNSの投稿しなきゃいけない社会っていうのも苦しいですよね。

お疲れの方はまつかな食堂へどうぞ(笑)


私も人の反応を気にして疲れがちなので…本当は静かに引きこもっていたい性格なのに長年ステージに立ち続けていられるのは、音楽だけじゃない私の考えや生き方を肯定してくれるファンの方がいるからですよ。いつも有難うございます。これからもよろしくお願いします!




松本佳奈 オンラインコミュニティ まつかな食堂 - Bitfan



■Profile/松本 佳奈



1985年生まれ

千葉県木更津市出身


ドラマーであり映像作家の夫と3人の子どもたちと、庭にサルやイノシシが訪れるような里山の古民家で、太陽と共に起き太陽と共に寝る日々。テレビのない生活の中、旬の野菜を食べること、生き物を観察すること、読書が好き。味噌や醤油を手作りしたり、友人の田んぼを手伝ったり。自然体でのびのび生きる。


幼い頃、家庭内で対立する母と祖母の板挟みになったり、いじめがきっかけで不登校を経験したことなどから、自分自身の気持ちを曲に綴るようになる。


2008年より都内を中心にピアノ弾き語りの演奏活動を始める。2010年には地元木更津に拠点を移し、田んぼや森、廃業した銭湯やお寺などでイベントを多数企画。

2019年からは音楽活動と並行して、アートを通じた街づくりを目指し『art of dialogue(アートオブダイアログ)』を立ち上げる。

これまでに6枚のアルバム、2枚のシングル、4枚のDVDをリリース。


◇松本佳奈 web https://matsumotokana.info/

◇art of dialogue https://artofdialogue.info/



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