YouTubeシンガー・なすお☆の共感を呼ぶ「歌」の根源ーー私が絶対に幸せにする|DIGLE MAGAZINE

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2022/06/03 15:00

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<目次>
▶︎ 「作りたいかもしれない」って思っていた曲たち
▶︎ 和泉くんから見た式守さんが一番ファンの人が見てる式守さんに近い
▶︎ ファンとしての自分が感じてきたことを忘れないように
▶︎ 何も考えずに色々な新しいことをやっていきたい



DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンプラットフォーム『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。今回はYouTubeシンガー、なすお☆が登場。

(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)






YouTubeシンガー、なすお☆。女性目線での替え歌カバー動画でブレイクし、2014年開設のYouTubeチャンネルは登録者数36万人を突破。歌詞と歌声が作り上げる世界観が共感を呼び、カバー曲に留まらずオリジナル曲にも注目が集まっている。


そんな彼女がオープニングテーマ曲を担当するのが4月9日(土)より放送開始されたTVアニメ『可愛いだけじゃない式守さん』。式守さんと和泉くんの高校生カップルを中心に描く累計発行部数300万部を突破したラブコメディだ。普段は可愛らしいのに、和泉くんのピンチになるとカッコよさまで披露する”イケメン彼女”の式守さん。オープニングテーマ曲「ハニージェットコースター」はこれまでも男性目線を女性目線へ、女性目線を男性目線へと歌い替えてきたなすお☆らしく、式守さんのセリフを男性目線のピュアな歌詞に乗せ歌い上げるポップナンバーに仕上がっている。


制作の過程では原作読者の声をSNSで研究したと語るなすお☆。丁寧にファンの声を拾い上げる彼女の姿勢から共感を呼ぶ楽曲制作の裏側、そして彼女自身のファンとの向き合い方に迫る。





「作りたいかもしれない」って思っていた曲たち

ーーなすお☆さんには思い入れのある楽曲をテーマに10曲のプレイリストを作ってもらいました。まず最初に目についたのが、ご自身の曲を2つピックアップされているところです。それだけ思い入れのあるオリジナルソングなんですね。


まず「キャンバス」は私がなすお☆として初めて作ったオリジナル曲なんです。この曲の歌詞は、保健所の犬の視点から書いています。保健所の犬が、拾ってくれた人間と出会って一緒に過ごしていくなかで、この犬の生活に色がついて愛を見つけていくという曲なんですけど、もともとすごく動物が好きで、小さいときから実家で柴犬を飼っていたのもあって、自分の中では特別な曲になっています。


もう一つの「star line」は、自分の曲の中で一番ライブで盛り上がれてすごく気持ちの入る曲。どこにも告知せず、急にライブで「新曲です!」って歌ったんですけど、それでも皆まるで知っていたように盛り上がってくれました。そのあとも「star lineめっちゃ好き」という声も多くて、後からMVも作って皆で作り上げたような曲ですね。




ーご自身の曲以外だと、YouTubeに上げられているRADWIMPS、back number、KANA-BOON以外にもSMAPの曲がプレイリストに入っていますね。


お母さんがSMAPをよく聞いていて、物心ついた時にはずっとSMAPが流れていました。ライブにも連れて行ってもらったんですけど、ステージがすごく輝いていて。そこでキラキラしてるステージを初めてみたんです。そして成長してから歌っている人がいて、その周りの人が楽器を弾いているバンドという物を初めて知り衝撃が走りました。1人の人に向けた“好き”という感情を何曲にも渡って書いていて、1つの感情にこんなに表現があるんだと驚いたのがRADWIMPSさんの「ふたりごと」です。


それから色々なバンドを聞くようになりました。ある日、どこかのお店に入ったときに不意にback numberさんの「思い出せなくなるその日まで」が耳に入ってきたんです。今までそういうところで曲が気になることはなかったんですけど、本当にパーッと流れてきた。すぐに覚えた歌詞で検索しました(笑)。


back numberを聴くきっかけになった曲ということですね。同じく「春を歌にして」も選曲されてますよね。


「春を歌にして」は私が所属している事務所に入ったときのオーディションで歌った曲なんです。もう緊張しすぎて何を喋ったかも覚えてないんですけど(笑)。とりあえず歌詞を覚えて、間違えないように必死で歌ったような記憶だけはあります。




他にはAcid Black Cherryやシドのように、なすお☆さんが歌われてきた曲とは全く違う系統のものも選曲されていますね。


ちょっとでも時間があったら友達とカラオケに行きまくっていた時期があったんです。テスト期間で早く学校が終わったときに、そのままカラオケに行って、夜までフリータイムで歌うっていう。そのときに友達がシドさんをめっちゃ好きで「妄想日記」を熱唱してたんですけど、歌っている友達がすごく楽しそうで。そんな楽しそうな顔をしている友達を初めてみたんです。そこからAcid Black CherryさんやJanne Da Arcさんとかを聞くようになって、どんどん好きになっていきました。曲もライブもすごく好きで、自分でもコピーバンドするぐらいどっぷりハマって(笑)。




和泉くんから見た式守さんが一番ファンの人が見てる式守さんに近い

ーそして実際に音楽を作る側に立たれたわけですね。楽曲制作のアイディアはどんな形で降ってきますか?たとえば歌詞からなのか、メロディーからなのか……。


私は誰かの曲やアルバムが新しく出たときも、聴く前にまず歌詞を読んでから曲を聴くことが多いんです。曲を作るときも日常で何かしてるとき、ふいに思ったことをちょっと物語っぽくメモしておく。お話を作る感じで歌詞を作り始めることが多いかもしれないです。


アニメ『僕のヒーローアカデミア』が大好きでプレイリストに入れた「スターマーカー」はそのオープニングテーマ曲です。『ヒロアカ』が好きすぎて、勝手に主題歌を作ってYouTubeに投稿したんですよ。それを偶然にも『式守さん』の担当の方が見てくださったようで、打ち合わせの際にも「本当にこれはこのアニメが好きじゃないと書けない歌詞ですよね」って言ってくれたんです。



ータイアップ楽曲の歌詞の『式守さん』のセリフを盛り込むなど好きじゃないと書けないものなのではないかと思います。こちらの楽曲はどう作っていきましたか?


『式守さん』はTwitterで流れてきて知ったんです。男の子のギャップをテーマにした作品には触れてきたんですけど、『式守さん』のような女の子の方が男の子よりもかっこいい作品ってめっちゃ面白いなって。女の子が男の子のキャラクターよりかっこいいって、それがすごく新鮮なんだけど、やっぱめっちゃかわいい。イラストのタッチも綺麗で「かわいい、かっこいい」って思いながら楽しんでいました。


『式守さん』の主題歌は漫画を全部読んだ上で、ファンの人がSNSに書き込んでいる応援メッセージから、『式守さん』を読んでいるのはどういう人たちで、どういうところをみんなが好きなのか研究しました。私の目線だけじゃなく、『式守さん』に詳しいファンの人とも同じ目線で歌詞を書きたかったんです。


ー作中の式守さんのセリフが楽曲では男性目線のものとして使われています。なすお☆さんはこれまでにも男性目線・女性目線を入れ替えた「歌ってみた」を投稿されていますね。そうした経験が活きたのではないでしょうか。


そうですね、活かされたのかもしれないです。どんなお話にも主人公が絶対いて、その主人公をが思ってることが主に歌詞になっていますよね。けれど、私は「その主人公に関わってる人が絶対にいるよな」っていうのを考えるんです。その人は一体どんな人と関わってきたんだろうとか、主人公とは違うキャラが実は同じ時間軸でこういうことを思っていました、みたいなのがすごく好きなんです。


『式守さん』には式守さんの恋人として和泉くんというキャラクターが登場します。男目線で書きたかったということではないんですけど、漫画を読んでいくたびに和泉くんから見た式守さんを書きたい気持ちが出てきました。和泉くんから見た式守さんが一番ファンの人が見てる式守さんに近いのかなと。



ー今回、主題歌を担当することになったときの心境はいかがでしたか?


主題歌に決定したのを聞いたときはからあげ弁当を食べてたんですよ。いつもの弁当を食べてるときに「なすお☆ちゃん、ちょっときて」と事務所の社長に呼ばれたので、ちょっとした打ち合わせかと思って「弁当食べながらでもいいですか?」って応えたんです。そしたら「実はアニメの主題歌に決まりました」とその場で言われて、本当に前触れもなかったし「どうしてなんだろう、ドッキリかな?」って考えちゃいました(笑)。ずっと念願だったアニメ主題歌なので嬉しいはずなのにびっくりしすぎて「嘘やん」って、その日は嬉しすぎて信じられなかった。本当に嬉しい時って「嘘やん」ってなるんだなと思いました(笑)。




ーアニメ化でこのシーンが楽しみ、というような場面はありますか?あるいは好きな登場人物とか。


登場人物だったら、八満(はちみつ)ちゃんっていう小さくて目が死んでる感じの子です。アニメや漫画だと、主人公1人が目立つようなところよりも、たとえば学園ものだったら、周りにクラスメイトのキャラクターがいて主人公がいるというような、他のキャラクターと主人公が絡んでいるシーンやサブキャラクターがたくさん出てくるお話がすごく好きなんです。『式守さん』でもやっぱり式守さんだけじゃなくて他のキャラクター、同じクラスメートのみんなとワチャワチャしているようなほのぼのしたシーンがいっぱい観たいと思っています。


今回オープニングを担当して、気づいたことや変化したことはありますか。


特に大きかったのは自分というよりファンの人達ですね。主題歌に決定しましたと発表をしたときに、発表前にも応援してくれてたファンの人が今までにないくらい喜んでくれたのをすごく感じています。私自身もあまり感じたことないぐらい嬉しいことが今起きているし、ファンの人にとっても起きてるんだという感覚がありました。


ファンの人にとっても大きな出来事であると同時に、今までなすお☆さんを知らなかった人がなすお☆さんの楽曲に触れるきっかけになるんじゃないかと思います。


やっぱり緊張はします。アニメの世界に関わるのも初めてで、アニソンシンガーとしてやってたわけでもないので「受け入れてくれるかなあ」とか、どう思われるのかと考えたりはするんです。けど、出会って好きになってくれたら、私が絶対に幸せにするって思っています。





ファンとしての自分が感じてきたことを忘れないように

ー昨年にはファンクラブを設立されていますよね。ファンとの交流はどう変化しましたか?


SNSでも結構、コメントを返したりとか、そういうのがすごく好きなんです。ファンクラブってファンの人にとってもやっぱり一つの「帰ってくる場所」になっていて、やっぱりさらに近くなったというか「そういう場所があるよね、だからまた明日も頑張れる」。私もそういう気持ちがまた増えたし、加入してくれている人も絶対そう思ってくれてると感じます。


ー今までのお話を聞いていても、周りの人やファンに対しての目線が細やかだというのが伝わってきます。今のなすお☆さんのファンは音楽をどういうときに聞いてるか、なすお☆さんのどこに期待して応援をしてらっしゃるのか、ご自身で考えることはありますか?


そういうことを考えながら動画を作ることは多いですね。最初にお話したように、アーティスト活動する以前から自分も誰かのファンになる経験が多かったので「こういうことをしてくれたら嬉しいな」とかアーティストが有名になって幸せそうなのがファンとしても幸せだなとか、ファンとしての自分が感じてきたことを忘れないように、自分が活動する側になっても考えていきたいです。


これまでのYouTubeの動画を眺めても、どういう内容なのか分かりやすく、見つけやすいタイトルを付けて投稿されていますよね。


どうにか見つけてほしいなって。絶対に見てくれたら、絶対に何か感じてもらえる自信を持った動画しか出していないんです。せっかく私も頑張ったし、タイトルからでも何でもいいから、どうにかまず出会いたいっていう気持ちが一番あります。投稿した後にタイトルを変えるときもあるくらいなんです。






何も考えずに色々な新しいことをやっていきたい

YouTube、TikTokなど新しいプラットフォームに対応して活動されてきましたが、これから10年先、誰に向けてどんなふうに音楽を届けていきたいと考えていますか?


どういうふうに変わっていくのか、もしかしたらSNSが全部なくなっちゃうかも分からないですけど、そのときに音楽を聞きたい人たちが集まる場所があれば、それが新しいプラットフォームでもどんどんやっていきたいし、結局ライブがいいって思う人が多いならライブをやる。私がしたいことはもちろん、ファンの人が私にしてほしいことをやりたいというのがあるんです。


これは何回も言ってるんですけど、新しくファンになってくれる人とも今いるファンの人とも、交流できたり新しく出会えたりするなら、何も考えずに色々な新しいことをやっていきたいなと思っているし、そういう新しいところでも音楽を発信していけたらなって思ってます。


ーでは最後に、アニメタイアップは既に大きな挑戦だと思いますが、なすお☆さんがこれからさらに挑戦してみたいことはなんでしょう?


活動の中で一番好きなのがライブで、2019年に一度8都市ぐらいを回って全国ツアーをしたんです。次はそれよりもさらに大きい会場で、もっといっぱいの人に会えるようなツアーをどうしてもやりたいなと思ってます。




(文: ゆがみん 編:Mao Ohya)



なすお☆ Official Fan Club – Bitfan

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