【Be! Talk #01】次世代アーティストが生きやすい世界を作るには ~YouTubeシンガー「なすお☆」所属 ArtPoolRecords代表・山下太朗氏×株式会社SKIYAKI代表・小久保知洋 対談~ vol.3
クリエイターとファンを取り巻く環境がめざましく変化を遂げる現代の「クリエイターエコノミー(※)」を題材に、小久保知洋(株式会社SKIYAKI代表取締役、Bitfanプロダクト責任者)がいま注目するキーパーソンと対談を繰り広げます。
第一回のテーマは「次世代アーティストが生きやすい世界にするには」。
YouTubeチャンネル登録者数35万人を超えるYouTubeシンガー・なすお☆の所属する音楽事務所 「ArtPoolRecords」やレコーディングスタジオ「studio SoCo」を運営している株式会社SoCo Group(ソコグループ)代表取締役社長の山下太朗さんを対談相手にお迎えし、SNS時代のアーティストの生き方について語っていただきました。
(※クリエイターエコノミー:個人の情報発信やアクションによって形成される経済圏のこと。プラットフォームの整備により、誰もが消費者であるだけではなく、発信者・販売者・生産者としてクリエイターとなれる時代が到来している)
■SNSの登場で、嘘がつけない時代になった
ーーー2013年に山下さんが会社を設立されてから、アーティストとファンの関係性が時代の流れとともに変わってきたなと感じる部分はありますか?
(山下)
距離感が近くなった部分が大きいかなと。昔は嘘で埋めているアーティストというか…売れていても、嘘で固めているようなスタイルもよくありましたが、今はなんでもすぐにインターネットでわかってしまう。「このアーティストがすごく人気です」と言っても、SNSを見られて人気がなかったらそれで終わり。本当に応援をされている人が強い。それが今なのかなと思っています。
(小久保)
やはりSNSの発達が大きいんですかね。
(山下)
大きいと思います。マスメディアからの情報しかない状態であれば「このスイーツ屋さんはこんなに行列ができていて、今若者に人気なんです!」とテレビに出れば、次の日には行列ができていましたよね。今はSNSを見て情報が本当なのかを確認するようになっている。
ーーー小久保さんはいかがですか。
(小久保)
クリエイターエコノミーの発展とともに、有名になったクリエイターやアーティストがブランドを持ったりする流れもすごく多いじゃないですか。
ブランドまでいかなくても、哲学的な影響力も大きかったりしますよね。D2Cブランドみたいな流れはそうだろうなと思うんですけど。最終的にクリエイターが何を売っているのかっていうと「ライフスタイル」を売っているんだ、みたいな記事を目にして、それが自分の中で腑に落ちたというか。
SNSの登場で嘘がつけない時代になったことで「クリエイターが信じているもの」それがその人の売り物というか、そこにファンがついてくるようになりました。そうするとそこに紐付いて「このクリエイターはこういう価値観に基づいて、この製品を使い、食事はこれを選んでいるんだ」そんな風に日々の生活にまで影響が出始めている。
マスの時代は切り取られた部分だけを演じていればよかった。それが今や全体を隠せなくなったことで全方位的に「私はこういう人だ」ということを確立していったら、逆に何にでも影響力を持つようになっているんです。
なのでブランドをプロデュースする、アンバサダーになる、みたいなものも含め、アーティストの影響力は音楽にとどまらず様々な方向に波及していく世界になってきているなと。
(山下)
みんな同じアーティストが好き、なぜならそのアーティストしかテレビに出ていないから、という時代は本当に一握りのアーティストしか売れなかった。
アーティストは「本当はもっと自分の大好きな音楽があるのに、テレビで流れるからにはおじいさん、おばあさんから小さい子どもまで、みんながわかりやすい曲を作らなくては」とやりたくない音楽をやる。見る側も「本当はもっと自分に刺さる音楽があるはずなのに、知る術がないからよくテレビで見る曲しか好きになれない」そんな時代でした。
今はもっと個々に細分化されたところで、ファンは自分が本当に好きな音楽を聴ける。そのファンが1,000人ぐらい集まればそのアーティストはもう、自分の信じる音楽で食べていける。最高の時代が来たなと思っているんです。
■「自分はファンコミュニティの一員である」という重みを実感してもらうには
ーーーそれではここからは改めて、山下さんにBitfanを選んでいただいた理由を伺えれば。
(山下)
ファンクラブのプラットフォームを探すにあたって、かなりのサービスを比べさせていただきました。その中でここは譲れないという部分が全部含まれていたのがBitfanだったんです。僕にとって、サービスに求める一番大事なことはアップデートの速度。時代が変わるスピードが速くなっているからこそ、アップデートがどれだけ速いかっていうのがキーワードになります。Bitfanはかなりハイペースでアップデートされていくのがすごい。
こんなサービスがあったらいいなっていうのが次々とアップデートされていくので、せっかくファンクラブを始めるんだったら、ファンの人と長くお付き合いできるプラットフォームを探したかったので、僕はBitfanがイチオシです!…PR案件みたいになっていません?大丈夫ですかねこれ(笑)
ーーー嬉しいですね、ありがとうございます!Bitfanでこれからやりたいこと、ご要望やリクエストはありますか?
(山下)
会員数をサイト上に表示したいんですよ。
(小久保)
今は出していないんですよね。昔、Bitfanアプリにだけは表示していたんです。ただ、出したくないという方が大半だったので現在は非表示にしています。山下さんは逆に、出したいと。
(山下)
アーティストにもよりますが、ファンクラブをやるからにはそこに人を増やしたいと思うんです。増やし方の一つの方法として「会員数が〇人になったら、これをやります」みたいなブランディングをしやすい、運用の幅が出るアーティストがいるので、数を出したいというニーズはあるんじゃないかなと。
「応援してもらう」ことですごく伸びるアーティストもいるので、表示させる・させないを選べたらいいなと思います。
(小久保)
ああ、なるほど。数を出したいというのはそういう意味なのですね。既定の金額が集まったらこれを実行します、のようなクラウドファンディングっぽさもあるというか。
(山下)
CDやグッズを買い集めるというよりは、ただ応援したいというファンの純粋な気持ちで成り立っているアーティストもいますから。そういうアーティストにとっては会員数の数字が出ているほうが「ここを目指したい」と目標を宣言しやすいので、ファンの方もさらに応援してくれるんです。
今、Bitfanに登録してくださっているファンの方って自分がそこに入っても抜けても、数字の動きがわかりませんよね。自分によって「1」が増減するのって、応援する側にも大事で。この「100人」のうち「1」が自分だ、と実感できれば「会員数が100人になりました!ありがとう!」の配信が一本あるだけで「自分がこのうちの『1』だから、このコミュニティの一員になっていていいんだ」と思えます。
数字が隠されていると、それがないんです。コミュニティ感が薄れちゃうというか。「自分はここにいなくてもいいんじゃないか?」となってしまう。今、このコロナ禍のインターネット時代にはコミュニティが重要です。コミュニティという意味で、数字が表示されているかどうかってかなり大きいんじゃないかと。
(小久保)
いわゆる従来のアーティストのニーズとは真逆な視点で驚きました。数字を出したくないという欲求はつまり、意外とファンが少ない、と思われたくないということ。マス時代の「私は大人気アーティストです」という虚勢を張らないといけなかった空気感ですよね。
しかしもう今は「私はファン1,000人が目標です」というのが見えていていいということですよね。そうすると、ファン一人一人に1,000分の1の重みが出てくる。
(山下)
結局バレちゃいますから。バレたくなかったらもうライブもできないし、SNSもクローズしないといけないし、YouTubeも始められないので。わかっちゃうんですよね。
(小久保)
一方で、ファンクラブを開始しても本人が思っている以上に有料会員登録してくれる人の率が低かったりするとクリエイターが「私、こんなに人気なかったんだ」と傷ついてしまう。それを回避するためにも、事務所の方からは「あえて本人には会員数を見せないようにしたいので、更新だけができるアカウントがほしい」という要望があったりするぐらいなんですよ。その様子を見ていると、会員数を表示するメリットがわからなかったんです。
でも今のお話はまさに新時代。ファンと一緒にクリエイターを大きくしていくにはむしろ、隠していてもしょうがない。ファン自身に「自分が〇分の1だ」という実感を持ってもらうことの重要さに気付かされました。
ーーープラットフォームを提供する側では気付きにくい、さすがの視点だと感じました。他にもあればぜひお願いします。
(山下)
Bitfan内に限ったことではないのですが、他のアーティストのファンクラブには何人ぐらい会員がいるのかがすごく知りたいですね。自分が今どのぐらいの位置にいるのかがわからないというか…多いのか少ないのか。数字がわかれば「あの人を目指して頑張ろう」とモチベーションにもなりますが、全くわからないと目標も立てられなくて。
(小久保)
難しいところですよね。我々も一般的な目安としての知見は持っていますが、ジャンルによってかなり異なることもありますし、実際に動かしてみると、その目安自体が外れることも結構あったりして。無料会員のうちどれだけが有料会員へと結びつくのか、ここはまだわからないことが多い。具体的にどこのファンクラブが何人かというのは言えませんが、音楽アーティストのファンクラブはまず100人という壁が最初にありますね。
(山下)
100人の壁か…。僕、ファンクラブを始める前に片っ端から色々なファンクラブに入ってみたんです。アーティストに限らず何十組か入ってみたものの、そこまでとんでもなくすごいコンテンツを提供しているところって見当たらなくて。
ということは、ファンクラブに入る理由はコンテンツだけじゃない。「ファンクラブに入っている自分=ファン」だという実感なんだと。入った瞬間ってなんだかちょっと嬉しいんですよね。そこが大きい。
僕は「ファンがいるからファンクラブを作る」ではなくて、「ファンクラブを広げることによって大きいことをしよう」という方向性なので、とにかくもっとファンクラブに入ってきてほしい。壁を超えていくためにはやっぱり「祭り感」を出していくのが重要だと改めて思いました。
■「痒いところに手が届く」プラットフォーム
ーーー今日の対談を通して、今の時代のファンプラットフォームのあるべき形をどう思いますか。
(小久保)
今日色々とお聞きしたことがまさにそのままかもしれません。今までのファンクラブとは、あるアーティストについたたくさんのファンのうち、コアなファンだけが入会してチケット先行やブログなど、ちょっとしたコンテンツを楽しむ、そういうものが多数派でした。
インターネットやSNSの登場で時代はどんどん変化しています。ファンが何万人もいるようなアーティストが生まれにくくなって、よりファンの規模も小さくなりコミュニティ化、双方向化していっている。多くのファンを獲得し、そこから一定数のコアファンが生まれてくるのを待つのではなく、「祭り」を起こして「ここ面白いかも」と思ってもらえる場所になるべきです。
今、「なぜメタバースとファンクラブの相性が良いのか」みたいな話も出ていて。もともとファンクラブって世界観を示すものが多いですよね、名称もホーム、ランド、ワールドとか。アーティストが独自の世界を作りたいっていう気持ちの高まりでもあり、ファンも没入感を求めている。
我々がここでやるべきなのは「ファンの毎日をどれだけ彩れるようなものにするか」ということです。例えば「どうぶつの森」のように、推しの写真で埋め尽くされた島があれば、毎日仕事から疲れて帰宅したあとにそこで癒される。ファンの活力になりますよね。それをイベントとしてではなく、常設のコミュニティにしたいんです。
ーーー山下さんとしては。
(山下)
好みが細分化されているということはつまり、色々なアーティストがいるということでもあります。その各アーティストに合うプラットフォームがほしいですね。そうなるとサービスがかなり手広くなってしまうかもしれないのですが、各アーティストの「こんな活動がしたい」にそれぞれぴったりハマる機能があってほしい。
イコール、常にアップデートしていかないといけない。痒いところに手が届いていくような場所が今後も伸びていく、皆が必要としているプラットフォームなんじゃないかなと。
ーーー最後のセクションとなります。お二人のこれからの目標であったり、やりたいことをお願いします。
(山下)
引き続きアーティストが食べられる場所作りと、なすお☆のファンクラブの有料会員を増やして大きくしていくことです。ファンクラブから他の所につなげていくようなこともしたいですね。入ってきてのファンクラブ、ではなくて、ファンクラブ発信でやってみたい。引き続き、実験をしながら頑張っていきたいと思います。
(小久保)
とにかくアーティストやクリエイターにどれだけ寄与できるかですね。経済的に支援がどれだけできているか、やっぱりそこはすごく重要だなと。いくら「楽しかった」とか「使いやすい」といっても、お金が稼げないプラットフォームには存在価値がありません。
僕らはマネタイズの「武器」をどれだけ作れるかが勝負になります。「痒いところに手が届く」というのは本当にその通りで、それを続けていくことで、他のプラットフォームに後から同じような仕組みを作るのが面倒だなと思わせたら勝ち。そうなれればユーザーの数も増えていきますから、人件費として次の開発につなげられたりとか、クリエイターの手数料を下げられたりとか、メリットがたくさん生まれます。
それにはとにかくプラットフォームとしての規模を拡大し、より多機能に、より使いやすくしていくことだと思っているので、道を間違えずに進んでいきたいです。
ーーー最後に山下さんから、これから活動を始めたいと考えているアーティストの方に何か一言があれば。
(山下)
「音楽をやりたい」と言ったら周りには反対されたり馬鹿にされたりすると思うんです。でも時代は変わって、好きな音楽で食べていける時代になりました。音楽で食べている人にどんどん相談しに行って、ぜひ夢を叶えてください!
ーーー本日はありがとうございました!
■Profile
山下 太朗(株式会社 SoCoGroup 代表取締役社長)
音楽デザイナー。アーティストを中心とした音楽をトータルプロデュース。
インターネットを用いた独自の戦略理論を用い、YouTubeシンガー「なすお☆」や「とくみくす」「りみー」などをトータルプロデュース。ファン0人からファン30万人以上に育て上げた。
「株式会社SoCoGroup」を設立し、「ミュージシャンが音楽で食べていける場所作り」という目標の下、500名以上のアーティストが所属、数々のプロジェクトを推進。
レコーディングスタジオから楽曲制作、イベント制作やグッズ販売などを自社完結されることでマネタイズを最大化し、アーティストへ還元、アーティストが早い段階から食べていける=長く活動出来る=チャンスを多くつかめる場所を日々作っている。
小久保知洋(株式会社SKIYAKI 代表取締役)
SKIYAKI入社時より現在まで、Bitfan グループ(開発部門) を担当。富士写真フイルム株式会社(現、富士フイルムホールディングス株式会社)、光画印刷株式会社、株式会社オン・ザ・エッヂ(株式会社ライブドア)執行役員、NHN JAPAN株式会社(現、LINE株式会社)執行役員、株式会社Cerendip代表取締役、株式会社Diverse取締役を経て、2019年、SKIYAKIに入社。2020年、代表取締役に就任。
■Service
Bitfan(オールインワン型ファンプラットフォーム)
誰でも無料で簡単に、オフィシャルサイトやファンクラブ、グッズ販売、ライブ配信、電子チケット販売など、クリエイター活動に必要な機能をオールインワンでご利用いただけるファンプラットフォームサービスです。「ファンのためにできることを。」をメッセージに掲げ、Bitfanはクリエイターがファンのためにできること・したいことを全て実現します。