【Pick Up Owner #14 後編】大比良瑞希|「好き」をピンポイントに共感してくれるファンを喜ばせたいし、裏切りたくない
エレキギターをつま弾きながらメロウな歌声を響かせるシンガーソングライター、大比良瑞希。新世代のシティポップの担い手として各方面からの注目度も高く、七尾旅人やtofubeats、蔦谷好位置らが参加した2nd ALBUM「IN ANY WAY」は話題を呼んだ。
『常に音楽に打ちのめされながらも救われている』と語る彼女の今回のインタビューでは、バンドとソロシンガーという形態への思い、コロナ禍のタイミングで開始したファンクラブや会員限定ライブへのこだわり、今後の展望などを探った。
⇒インタビュー前編はコチラ
MIZUKI OHIRA OFFICIAL FAN COMMUNITY "mimitometo" – Bitfan
■ファンクラブ限定ライブは「普段やらないこと」をする、特別な場所にしたい
ーーー2020年の7月にBitfanでファンクラブを立ち上げていただいて。始めた理由を伺いたいです。
ちょうど2020年6月にアルバム「IN ANY WAY」を発売しましたが、そのアルバムのリリースツアーとかもできなくて…配信ライブしたりとか、コロナが流行ってしまった中で何ができるかっていうのを色々と考えていたんです。その中の一つとして、前からやってみたかったけどできていなかった「ファンクラブ」を、今ならいいタイミングだと思って迷いなく始めました。
ーーーいろいろ使えるサービスがある中で、Bitfanにしていただいた決め手というのは?
新しい機能が次々と発表されていったりとか、アップデートが常にされているような感じを受けて。それがすごくこれからも楽しみだなって思いました。どんな人が何人登録してくれているか、みたいな細かいデータが見えるのも楽しそうで。
ーーーありがとうございます!
データのアップロードがすごく早くてやりやすいのもあります。ポッドキャストを毎月配信しているんですが、そういう重めの音声のデータとかもすぐUPできて。聞く側もバックグラウンド再生もできますもんね。そういう点も便利でいいなと思ってます。
ーーー大比良さんのポッドキャスト、声がとてもほっとするというか、聞き心地がいいですよね。しかも弾き語りもしていただいていて、すごく素敵なコンテンツだなと。コメントで色々と内容を募集されたりとかもされていますよね。
だんだん、何喋ったらいいかわからなくなってきてて!初回を30分以上にしちゃったので…短くできなくなっちゃって(笑)15分ぐらいにしとけばよかったかもしれない(笑)
ーーー毎回一人で喋るのって大変ですよね。喋って歌って、大満足のコンテンツに仕上がっていると思います。
一日かけて作っています。編集もしていますし、前半は自分で作った曲のインスト部分をBGMにして、後半は買った音源から毎月変えて四曲ぐらい並べていて。その曲選びも結構時間がかかったりしています。それもまた楽しいんですけどね!
ーーー延期(※)となってしまいましたが、ファンクラブ会員限定のイベントは場所もとてもこだわっていられますよね。去年は神奈川県の「逗子シネマアミーゴ」、今回は埼玉県の「月光荘ファルベ」。ライブ会場としてあまり有名ではありません。どうやって探しているんでしょうか。
そもそもファンクラブライブは、せっかくなので普通と同じライブにはしたくないなって思っていて。より近づける場所でもありたいし、普段のライブハウスとは全然違う場所を探したいっていうのがあって、去年は逗子の古民家みたいな映画館でやって。
今度の会場は、絵の具の工場なんです。絵の具の工場を一部リノベーションしてカフェになっている部分を、イベントにも使っていいよっていう場所を見つけて、そこでやらせていただくっていう予定だったんです。でもその場所になったのもすごく面白い経緯があって。
(※:『“mimitometo” MEMBERSHIP EVENT VOL.2』 2022年1月29日(土)に埼玉県にて開催予定だったファンクラブ会員限定ライブ。2月26日(土)に振替)
ーーー何かご縁があったのですか?
今回の「月光荘ファルベ」は雑誌…OZmagazine(※)かな。美術館特集を見ていた時にちらっと目に入った記事があったんです。素敵な写真と、イベントとかライブもやれます、みたいな文章が載っている、すごくちっちゃな記事を見つけて。
まだオープンしたばっかりだったんですけど、これは面白いかもしれないと一回行ってみました。駅からかなり遠かったので、ちょっと皆さん、色々なところから来てもらうには不便かなとも思ったんですけど…駅から20分ぐらい歩いた先にこんな場所があるとは!ってくらい、すごくおしゃれで素敵な場所が出てきて!
中にいらしたお店の方もとても優しい素敵な方で、ここでライブをしたいんですがってお話をして。オーナーの方と繋いでいただいたら、その方がオーナーとしてのお仕事もしつつミュージシャンとしても活動されていたんですよね。
共通の知り合いもたまたまいたりして、すごく話が盛り上がって!なので、こういう風に場所を探していなかったら、なかった出会いなんです。不思議な縁ですね。
(※:「OZmagazine」 スターツ出版が発行している首都圏向け情報誌)
ーーーファンクラブのイベントをやる場所を探そうと思って雑誌を見ていられたんですか?常日頃から探されていたんでしょうか。
普通に趣味として、美術館とか新しいところに行きたいなって雑誌を読んでいて、たまたま見つけたんです。探してもいたので、一応アンテナは張っていたと思うんですけど。なので、日ごろからもうちょっと色々よく見ておこうって思いました(笑)
ーーー個人的に、大比良さんの音楽は都会から少し離れたところで聴きたくて。だから会場のチョイスが素晴らしいなと思ったんです。夜の焚き火の前とかでも素敵そう。
外だったり、キャンプ場とかでもやりたいなって思っています。もっと様々な形でライブをしたいですね。ファンクラブ限定のライブも、もっとできたらいいなと。
ーーーファンクラブならではの企画として、色々できそうですね。
ライブの内容的にもやっぱり、曲が増えてくるとどんどん新曲ばっかりになってきて。昔の曲をやるタイミングってどうしてもなくなっちゃうんです。けど、ファンクラブのライブは、普段はしないベースの弾き語りだとか、映像を使ったりだとか、そういう普段のライブではやらないことをやれる場所にしたいなって。
ーーー大比良さんにとって、ファンはどのような存在ですか?
「スペシャルサポーター」なんですけど…「メンバー」みたいな感じもするかなって思います。それこそバンドメンバー、チーム、スタッフさんとかの、そういう一員。一番私の感覚に共感してくれる人たち、「好き」っていう気持ちをシンクロできてる人たち。そんな存在がいてくれることがとても嬉しいですし、これだけいっぱい人がいる中で、その「好き」をピンポイントに共感してくれているって、すごいことだと思うんです。一緒にそう感じられる人をさらに喜ばせたいし、喜ばせられると思うし、裏切りたくない。
■肩の力を抜いて、自分を出せる場所
ーーー『OFFICIAL FAN COMMUNITY "mimitometo"』の運用はすべてご自身でされているのでしょうか。
はい、そうです。
ーーーコンテンツの内容もご自身で決められて。
私の音楽仲間でもありリスペクトしている方に、34423さんというトラックメイカーの女性がいるんですけども、めちゃくちゃアイデアマンで。10年くらいは繋がっていて、友達としても音楽的な情報をやり取りする仲間としても、ずっと信頼している1人。
このファンクラブはせっかくだから「別荘」じゃないけど、ちゃんとパッケージングされたものにしたいなと思っていました。彼女に「ファンクラブ始めたんだよね」って話をしたら、企画書を一緒に作ってくれて。もっとどういう風にしたら面白くなるか、すごく丁寧に考えてくれていて、そこからもう完全にファンクラブのディレクターみたいな感じでいてくれます。
ーーー心強い仲間ですね。ファンクラブの名称を2021年9月に『MIZU MIZU FAN CLUB』から『mimitometo』にリニューアルされましたよね。リニューアルも344さんと一緒に考えられた結果なのでしょうか。
そうです。どうしてもファンクラブってクローズになってしまうので、せっかくあるこの場所をもっと外に出していけるものにしたいなって思って。表紙の部分をどうやったら外に出せるか、ロゴや名前を通して「1ページ目を開いてみたくなる感じ」にはどうやったらなるか、を一緒に考え直そうよってなったのが、2021年の夏。
去年の夏があまりにも暇だったので、そこに集中してできたっていうタイミングでもありました。あと、9月にちょうどファンクラブの方限定の有観客ライブの初回を始めたので、そのタイミングでがっつりリニューアルもできたらいいなと思ってやりました。
ーーーライブの回数も減ってしまい、もどかしい思いがある中でリニューアルだったりイベントだったりとファンクラブ限定での動きがあるのは、ファンとしても嬉しいですよね。ファンクラブを始めて、大比良さんにとって良かったことはありましたか。
特別な場所ができたっていうのはすごく大きくて。今までもSNSでやりとりをすることはできていましたけど、やっぱりもっと近い場所でコミュニケーションができることで、私もそれが支えになることがたくさんあります。肩の力を抜いて自分を出せる場所があることで、そこを軸にして制作がより進んだり、イベントをやることによって自分の音楽的な部分へのモチベーションになったりしていますね。
ーーー大比良さんのファンの方はコメントが暖かいですね。イベントの延期に関するリアクションでも。
素敵な方々が本当に多いので、私自身もすごく感謝していますし、嬉しいです。音楽好きな方も多いので、私のほうが音楽を教えてもらう時もあったりします!
ーーーコメントは、確認する時間を作って見ていらっしゃるのですか?
通知が届くのがわかりやすいので、そのたびに確認しています。時間があるときはなるべく返事もしているんですけど、皆さんコメントをよくくれるので、追いつかなかったりしてます(笑)でも、コメントを読むのはすごく楽しみになっています、日々。
■ファンクラブの存在をどう知ってもらうかが課題
ーーー今後、ファンクラブを通してやっていきたいことはありますか。
具体的にはまだあまり見えていないんですけど、コラボレーションをしたいなと思っていて。ブランドとコラボレーションしてのファンクラブ限定のグッズとか。大比良瑞希としてのグッズは音源に紐付いているものとして作っていることが多いので、もうちょっとブランドっぽく。
ゆくゆくは私のファンクラブという名前にも囚われずにプロダクト展開もしてみたいですし、例えば香水とかとコラボするとか、お花とか、陶器とか。色々と実験をしていける場所としてやっていけたらいいなというのは考えています。
やりたいことはたくさん思いつくんですけど、いざ形にするのは中々難しくて。今はまだうまくアプローチできていない、まだこの場所を知っていただけていない方でも入りたくなるよう、どういう風にしていくかっていうのが課題です。
ーーー一緒に作っていける気持ちになれるのはワクワクしちゃいますね。グッズといえば、大比良さんのグッズデザインはとてもおしゃれですよね。普段使いもしやすくて。
デザインは基本的にデザイナーの友達にお願いしています。『mimitometo』のロゴは「窓」とか「縁」とか、言葉のイメージを伝えて、あとは色の指定もなんとなく作ってお願いしたりとかして。
このロゴから新しくロンTやカレンダーを作ったんですけど、それは自分でデザインしました。だからそういう勉強もしたいなって思ってます。
ーーーもともとデザインの勉強をされていたというわけではないのですね。
ちゃんとはしていません。大学を出た後、少しファッションの学校のスタイリスト育成コースみたいなところに行っていて…でも本当に短い期間だったので、大したことは勉強できていないんです。ちょっと自信をもらったというか、こんな感じでやってみよう!っていう気になれる原点はそこかもしれないですね。
ーーー『mimitometo』ガイドもすごく素敵で!無料でもらえるフライヤーの域ではないですよ。
それもさっき出てきた34423さんが作ってくれたんです。すごく豪華にしてくれて!表面はポスターっぽくなっていて、裏は新聞みたいな感じに。やっぱり、このファンクラブの存在をどう知ってもらうかっていうのが課題で。
「ファンクラブ」って、昔からのアイドルの親衛隊みたいな印象がどうしてもあるから。そこに留まらないように。このドアを開けたらどうなるんだろう、と思えるフライヤーとしてテイクフリーとして置いておくので、気になったら入会していただけたらなと。
ーーー普通にグッズの1つとして物販で売っていてもいい感じ。
そうなんですよ、だから既に入ってくれている方からも好評で(笑)いっぱい配っていきます!
■エレキギターの弾き語りを日本に浸透させていきたい
ーーー今はまだ先の見えにくい世の中ではありますが、これからの目標や、やりたいことを教えてください。
途中でもちょっとお話しましたけど、エレキギターの弾き語りを日本に浸透させていきたいっていうのが今一番私がやりたいことで。なので、その弾き語りだけのスタイルでのライブをもっとやっていきたいなって思ってます。バンドの形でのライブだったり、配信ライブだったりもやりながら、また新たなお客さんと出会って、そこから『mimitometo』にも入ってもらえたらいいなと。『mimitometo』でできることも増やしていきたいですね。
ーーー最後に、ファンの皆さんに一言お願いします!
このファンクラブに入ってくださっている皆さんは、私の「メンバー」になった気持ちで、私が公には出さないものも、なんでも受け止めてもらえたら嬉しいですし、互いの生きる糧になる場所として一緒に作っていけたら最高だなと思っています。
そして大事なお知らせですが、3月30日(水)に、3rd Album 「Little Woman」を発売致します!私が大好きなトラックメイカー、アレンジャーの方々をお招きして完成したコラボレーションアルバムでもあり、歌詞世界はまさにコロナ禍においてできた一枚となりました。3月24日(木)には、一足早くアルバムリリースワンマンライブを東京・渋谷WWWにて開催致します。バンドメンバーとともに、特別な一日になる予感しかしませんので、ぜひお見逃しないよう。皆様のご来場を心よりお待ちしております!
MIZUKI OHIRA OFFICIAL FAN COMMUNITY "mimitometo" – Bitfan
■Profile/大比良瑞希
東京出身のシンガーソングライター、トラックメイカー 。
2015年3月ミニアルバム『LIP NOISE』のリリースでソロ活動をスタート。
スモーキーな歌声と、エレキギターを爪引きながら歌うスタイルは、明るくも物憂げな唯一無二の世界観を包み込み、ソウルフルかつオルタナティブロックに、新時代の歌謡曲を紡ぐ。
FUJI ROCK FESTIVAL、 SUMMER SONIC、りんご音楽祭、GREENROOM FESTIVALなど、大型フェスへの出演も多数。過去には、tofubeats、LUCKY TAPES、Alfred Beach Sandal×STUTS、Awesome City Club、Gotchの作品やライブにも参加。
2019年4月スタートのテレビ東京・木25ドラ「電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-」で、音楽を監修する蔦谷好位置氏のプロジェクト・KERENMIの目に留まり、主題歌のフィーチャリングボーカルを務める。その他、企業とのコラボレーションやCM楽曲制作なども携わる。
高感度な音楽ファンは元より多くのアーティストに称賛されており、次世代型シンガーソングライターとして注目されている。
2022年3月30日(水)、現在シーンを賑やかす音楽プロデューサーYaffleをはじめ、様々なアレンジャーを迎えて完成した3rd Album『Little Woman』発売。3月24日(金)には、東京・渋谷WWWにて、久々のバンド編成ワンマンライブを開催予定。
2022年3月30日発売 3rd Album『Little Woman』
●Official Website:https://ohiramizuki.com/
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