【後編】jizueがリスペクトする音楽を集めたプレイリストを公開。影響を受けた楽曲から、3人の音楽観を紐解く|DIGLE MAGAZINE
<目次>
▶︎ ロックバンドが持つエネルギー
▶︎ 15周年とこれから
DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。
(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)
今回は京都のインストバンドjizueが登場。後編をお届けします。
※取材は2021年に行われたものです。
ーピアノの音に愛着を持っているギタリストが作る曲って、実際に鍵盤を弾く片木さんはどういう風に捉えていますか。
片木 希依:
ギタリストってギュイーンって前に出たい人が多いイメージやったんですけど、こんな人もいるんやなっていう感じです。
ー(笑)。
片木 希依:
あと、楽曲もピアニストじゃない人が作るピアノのフレーズなので、“それは絶対無理やって”みたいなところがいっぱいあるんですけど、実際弾いてみたらめちゃくちゃカッコ良いです。
ー“これ指足りないわ”みたいなこともあるんですか?
片木 希依:
めっちゃありますよ(笑)。そういう時はそっと音を省いたりしてます(笑)。でも、これは1万回弾いても絶対弾かれへんって思っても、それをできるようになる楽しみもあって。鍵盤奏者じゃない人が作るからこそ、面白いものができてくるなと毎回楽しみにしています。
ーなるほど。
山田 剛:
でも、希依ちゃんが言ってることは逆もまた然りで、希依ちゃんが作るベースは僕のこと天津飯と思ってるんちゃうかな?っていうのが結構あります。
井上 典政:
(笑)。
山田 剛:
腕4本ぐらいないと割りに合わへんっていう。で、僕も一応与えられた課題なので必死で練習していくんですけど、スタジオに行ったらやっぱりいいわって言われたりします。
片木 希依:
言いがち~(笑)。私“これやっぱいいわ”って言いがちです。
ー練習する方はいろんな意味で鍛えられますね(笑)。片木さんがNABOWAをセレクトしているのも印象的でした。一緒に作品も作られていますよね。
片木 希依:
お互い京都出身のインストバンドで、男性メンバーはみんな同い年くらいだったりして、世代も同じなんです。NABOWAは近いシーンで活動しているけど、いつも新しいことに挑戦していて刺激になっています。ライバルでもあるし、盟友でもあるし、一緒に飲むこともたくさんあるし、凄く良い関係です。
井上 典政:
僕らは元々彼らの音楽が好きで、路上も見に行ってました。どんどん大きくなっていくNABOWAのステージをいっぱい見てますし、僕らが〈bud music, inc.〉に入ったのも、NABOWAのヴァイオリンのヒラクちゃん(山本 啓)が紹介してくれたからです。
ー「揺らぐ魚」は特に好きな曲なんですか?
片木 希依:
そうなんですよ。これはドラムとベースは入ってこないんですけど、メロディがとにかく美しい。インストならではの心に届く曲というか、風景が見える曲っていう点でも、素晴らしさが詰まった一曲です。
ー国内のインストバンドでは、indigo jam unitもセレクトしています。
山田 剛:
indigo jam unitは<RAG>という京都のジャズバーでライブを見たのがきっかけで、それからは毎回彼らのライブを見に行ってました。ループの曲が多いんですけど、ベーシストのプレイやソロで沸かせるところを見ていると、ちょっとロック寄りの文化を感じるんですよ。
ーロックで言えば、Oasisの「Don’t Look Back In Anger」も印象的です。
山田 剛:
この曲をフジロックでNoel Gallagher’s high flying birdsがやっているのを見たんですよね。6万人くらいの人が大合唱している光景に、音楽の力を再確認しました。
ー改めて見ると、山田さんのセレクトはロックバンドが多いですね。
山田 剛:
元々Hi-STANDARDを聴いてた人間なので。でも、井上くんもオシャレな選曲をされてますけど、完全に同じ畑の人間ですから。
ーそうなんですね?
井上 典政:
僕らの音楽にはミクスチャーやメロコアの流れが入っていると思います。取り入れようっていう感じはあんまりないですけど、勝手にそういうプレイになっているんやろうなって。ロックバンドの力強さとか、そういうところは3人ともめちゃくちゃ好きです。
片木 希依:
<FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)>に行って、嵐の中で見たBRAHMANで全員で泣くっていう(笑)。美しさとか、壮大さとか、心にドーンって響くエネルギーって、音楽ならではやと思います。そういう要素は自然とjizueの楽曲にも出ているんやないかな。
■ 15周年とこれから
ー年内には新しいアルバムが出るんですよね?
片木 希依:
はい、12月にアルバムが出ます。
ー昨年『Seeds』(「Seeds」は種という意味)というアルバムを出していたので、新作の『Garden』というタイトルを聞いた時、昨年撒いたものが芽吹く場所という意味なのかなって思いました。
山田 剛:
おお、凄く素敵な解釈。
片木 希依:
本当に素敵。それいただきます、これからラジオ出る時は全部それ言おう(笑)。
ーあ、違うんですね?(笑)
片木 希依:
jizueを結成した頃ですね。15年前私たちがよく集まってたマンションに庭があって。
山田 剛:
そのマンションの名前が“ファミールガーデン”っていって、そこから取っています(笑)。
ーなるほど(笑)。どんな作品になりましたか?
井上 典政:
今回はいろんな要素の入っている、幅広いアルバムになりました。歌ものもありますし、何曲か歌っている曲も入っていたり、15年間やってきたjizueの面白さが詰まった作品です。
ー同月にはオーケストラとのライブもありますね。
片木 希依:
以前京都市交響楽団のオーケストラとライブをやったことがあるんですけど、12月にその東京バージョンを行います。
ー凄く楽しみです。
片木 希依:
私はjizueを結成した時、<フジロック>に出るようなカッコ良いバンドになりたいって漠然とした憧れを持っていたんですけど、私たちも2012年、16年の2回出させてもらっていて。その初めて行った<フジロック>で、MONOがニューヨークからオーケストラを連れてきて演奏していたんですよね。それを見て私らもいつかオーケストラとやりたいっていう夢ができて、それが叶ったのが一昨年のライブでした。夢の続きにまた次の夢が見つかっていくような気持ちがあります。
ーどんな手応えがありましたか?
井上 典政:
もう僕はあの時やったライブを超えることは、しばらくないんちゃうんかなって思うくらい感動してました。ホールの響きとストリングスがないと絶対味わえへんようなライブで、お客さんに届けたいという気持ちで演奏しているんですけど、いざステージに立ったら自分がめちゃくちゃ感動してました。
ー少し気が早いですが、jizueとして次なる15年をどんな風に過ごしたいですか?
片木 希依:
30周年ってことですね?(笑)。私は何かが続いていくことって、凄いことやなって思います。現状維持だけでは続いていかないから。
ー本当にそうですね。
片木 希依:
この前伊勢神宮の話を聞いたんですけど、20年か40年に一回ほこらを変えるみたいなんです。親方から弟子に引き継ぐ時、その時の最先端の技術で新しい建物を建てるようで、同じものはやっぱり時と共に朽ちていくから、それを維持しようと思ったら修繕していく努力も必要なんですよね。それってバンドにもめっちゃ通ずるなって思います。たぶん同じことを繰り返しているだけだとドンドン飽きられるし、自分たちも楽しくなくなるので、楽しく続けていくために頑張るべきことがいっぱいあるんだろうなって。jizueが続いていくことが3人にとって一番大切なことやと思うので、20年、30年とやっていけるように頑張りたいです。
ー今は音楽にリーチする方法も広がっている気がします。
片木 希依:
みんなサブスクなどで好きな音楽を聴くようになりましたよね。SNSなどコミュニケーションが取れる場所たくさんあるので、楽曲はもちろん、jizueの人間性とかチームとしての在り方とかも見てもらいたいですね。そこから音楽を好きになってくれる人が増えたら嬉しいなって思います。
jizue『Garden』
2,500yen(tax out)
CD
VICJ-61789
Released by Victor Entertainment
21.12.1 on sale
(『DIGLE MAGAZINE』編集部 文: 黒田 隆太朗)