【後編】池田智子が「wailkin’」と一緒に聴いて欲しい曲とは? プレイリストと共に独立後の心境・これからを語る|DIGLE MAGAZINE
DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。
(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)
今回はShiggy Jr.の解散後、自主レーベル tiny_mou(タイニームー)を立ち上げソロ活動をスタートさせた池田智子が登場。後編をお届けします。
■ 90年代っぽさを意識した
ープレイリストの中で2つムードが違うものがあるなと思っていて、ひとつがPhony PPLでした。
Phony PPL大好きなんです。それこそ活動することも決まっていない時に聴いていて、なんだこれめちゃくちゃカッコいいなって思っていました。『mō’zā-ik.』は2019年一番聴いていたアルバムかもしれないです。ブラックな重さと、美しくてキラっとしたサウンドを両立させているところが凄く素敵です。
ーそしてもうひとつ、キミドリはめちゃくちゃパンチがありますね。
そうですね(笑)。これだけ浮いてるなと思いつつ、凄く好きな曲なので入れました。確か最初はやけのはらさんのカバーで知ったんですけど、そこから辿り着いてキミドリは大学生の時によく聴いていました。ドープというか、ちょっとFishmansに近いものもあるじゃないですか。
ー確かに。
それで大学生のモヤモヤした時期に凄く聴いていて、今でも落ち込んだ時に定期的に聴くみたいな感じで。今回入れたのはそういう思い出もあるし、ミックス作業する時に、サウンド面では90年代っぽいざらっとしたものを目指していたので、そこで参考になったという意味でセレクトしました。
ー90年代っぽさというのは、どんな理想からですか?
パーシーさんがざっくりとしたミックスをやってくださって。その時のざらっとした感じが凄くカッコよくて。ずっとJ-POPをやってきたから、それに比べるとリズムが凄くバキっと出てるし、上モノに存在感があったり、バランスの作り方が違っていて、こういうふうに作っていくんだなって新鮮だったんですよね。
ーなるほど。
それで今回エンジニアさんにミックスを投げる時も、なるべくこのバランスでブラッシュアップしてほしいとお願いして。その時にエンジニアさんの方から“90年代っぽい感じがあるから、それを今っぽくやるのがいいのかな”って話をいただいて、やっぱり自分が好きなテイストって、そうやって結びついていくんだなって発見がありました。
ーキミドリの「自己嫌悪」はアイデンティティを見つめ直す曲だと思いますし、池田さんの「walkin’」も前半のリリックではそうした側面があると思います。
こうした作り方だと、メロによる制限がないじゃないですか。文字数がリズムにハマればあとは自由にできるので、自分の気持ちとか伝えたいことを優先して、その後にメロをつけられるんですよね。なので自分が思っていることを書きやすい形式だったというか、音楽の持っているジャンルとしてのパワーを感じました。
ーずっと続けていたことをやめてひとりの時間が増えたことで、“自分とはなんぞや”ってことを考えたり、内省的になっていくところがあったんですね。
本当にそうですね。人生であんなに燃え尽きたことはないなってくらい燃え尽きちゃったので、全然欲がなくなっちゃって。寝て起きて食べて寝る、みたいな感じになったんですよね。で、そうなった時に、私はやりたいことや欲しいものがあることで毎日自分を動かせていたんだなって発見して、それがない状態の辛さを実感していました。
ーなるほど。
でも、そうなっちゃう瞬間って、大なり小なり誰にでもあるんじゃないかなって思います。ある意味不甲斐ない状態で、凄くカッコ悪いし、もしかしたら人によっては甘えている状況だって言うかもしれないけど、そこで自分を救ってくれる音楽とか、そういう自分を正直に出せる場所があれば私自身が凄く救われるなって思ったので。人のためじゃなくて、自分のためにもそういう音楽を作りたいと思いました。
■ 2021年の目標
ー今はどんなことがモチベーションになっていますか。
やっぱりこの活動をなるべく自分のペースで続けていけたらいいなと思います。前みたいに“いつまでにどこでライブをしたい”とか、“どれだけの動員を持ちたい”とか、そういう目標の持ち方はしなくなりました。自分の気持ちの小さい変化を蔑ろにしてきたなって思うので、今は自分がどんなことを感じているかとか、何をしたいのかっていうような、短い距離の目標とか夢を大事に活動しようと思います。
ーひとりでの活動になって、ファンとの関わり方を考えたところはありますか。
1年間何もしてなかった時があって、SNSも更新していなかった時期が何ヶ月もあったんですけど、そういう時期を経てもなお、リリースした時には“待ってたよ”とか“おかえり”って暖かく迎えてくれたので、そのありがたみは凄く感じました。何かを好きでい続けることって結構エネルギーがいることだし、当たり前のことではないなって思うので、ちゃんと作ったものでお返しできたらいいなって思います。
ー1曲リリースしてみて、バンド時代とは違う層にリーチできた実感はありますか。
ライブをしていないので新しい人が来てくれた実感をはっきりとは持てていないんですけど。たとえば音楽関係の方からは「walkin’」を聴いてバンド時代とは違うイメージを持っていただいたみたいで、一緒に何か面白いことできるかもしれないって言ってくださる方がいたり、そういう出会いがあったのは嬉しかったです。
ー2021年、創作や活動面で見えているものがあれば教えていたださい。
今年はEPを出すことが一番の目標です。それには曲がある程度ないといけないし、資金の面も含めて、どうやって回していくのかを考えていかないといけないので、凄く大きな目標ですね。作品のテイストに関しては、今回はラップに近い形でやってみたんですけど、活動を始めたばかりなのであんまり絞り過ぎず、自分の声でどんな表現ができるのかもっと試していきたい。もうちょっとメロディの要素が強いものも出していくと思うし、逆にこういうテイストのものをもう少し深めていくかもしれないし、柔軟にやっていきたいですね。
ー曲のストックはあるんですか?
いや、全然ないです(笑)。曲が溜まるの待ってたら年明けちゃうと思って、出来上がった「walkin’」をまず出しました。なのでもうすこしペースを上げないとなと思いつつ、まだ全然慣れてないんです。自分のライフワークとして、一番いいバランスを探していきたいと思います。
(『DIGLE MAGAZINE』編集部 文:黒田 隆太朗/写:木村篤史/編:久野麻衣)