【前編】池田智子が「wailkin’」と一緒に聴いて欲しい曲とは? プレイリストと共に独立後の心境・これからを語る|DIGLE MAGAZINE

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2021/08/27 18:00

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DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。

(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)


今回はShiggy Jr.の解散後、自主レーベル tiny_mou(タイニームー)を立ち上げソロ活動をスタートさせた池田智子が登場。前編をお届けします。





2020年は池田智子にとって新しいスタートを切る1年となった。2019年の9月にShiggy Jr.の活動を終えた彼女は、しばらく燃え尽きた状態で何もする気が起きなかったという。そうした自分自身と向き合う時間を過ごした後、夏頃から自主レーベルを立ち上げ1st single「walkin’」をリリース。1年ほどの休息期間を経て、音楽家として再び門出の時を迎えている。



音楽を続けていくかも考えたという彼女は、今何を原動力に歌っているのか。作詞を始め、新しい歌唱法や音楽性へとトライしたとたことで感じた可能性とは何か。「『walkin’』と一緒に聴いて欲しい曲」と題したプレイリストと共に、池田智子の心情に迫ってみた。



■ 音楽しかないと思った


ー「『walkin’』と一緒に聴いてほしい曲」というテーマでプレイリストを作っていただきました。このテーマで曲をセレクトしようと思った時、一番最初に浮かんだ曲はなんですか?



最初に入れたのはFishmansの「Walkin’」ですね。


ーリリースされた曲と同じタイトルですね。


「walkin’」を作っていたときは、平歌というかサビ以外の部分がまず形になっていて、サビの冒頭を最後まで悩んで<Walkin’>ってフレーズに決めました。今回のテーマでプレイリストを作るにあたって、そう言えばFishmansにも同じタイトルの曲があったなと思って。Fishmansは大学時代に上京して、いろんな音楽を吸収している時期に一番聴いていた音楽でした。思い入れが強いし、これから活動するにあたってあやかるじゃないけど、誓いのような大事な気持ちを込めたいなと思ってこの曲を入れました。


ー学生時代、Fishmansのどこに惹かれたんでしょうか。


最初に聴いたのは高校生の頃で、初めて聴いた時にはどういう風に聴けば良いんだろう?っていう戸惑いの方が大きかったんですけど、大学で軽音部に入っていろんな音楽を聴く内に、分かった!って思った瞬間があって。それからずっと大好きです。佐藤さん(佐藤伸治)の歌詞は柔らかくて誰にでも伝わる言葉で、誰にもできない切り取りをしていて、シンプルだけど奥が深いというか、そういう普遍性に凄く惹かれます。



ーということは、ご自身の楽曲でも言葉には重きを置いた?


そうですね。人生で初めての作詞だったので、やっぱり至らないところはあるとは思うんですが、今できる精一杯の、大切な歌詞になりました。


ー赤裸々というか、ダウナーな感情も表現されているなと思います。


バンドの時にはギターの原田くん(原田茂幸)が作ったものを受け取って、どうしたらライブでお客さんが盛り上がってくれるかに軸を置いて考えていたんですけど、これからは自分の内面とか、これまでは見せてこなかった面もしっかり外に出してあげないとバランスが取れないと思ったんですよね。勇気がいることではあるけど、まずは自分のためにそういうスタンスで曲を出してみたいという想いがあって、正直に色々書こうと思って書きました。


ーShiggy Jr.解散後、ご自身のレーベルを作られたそうですね。


解散してから一年くらい、全く活動していない時期もあったんですけど。2020年は世の中的にも凄く色々なことがあったし、個人的にもずっと続けていたことが一旦終わったというのはやっぱり大きな変化で、これから音楽をするのか、しないのかっていうことも含めて色んなことを考えたんですよね。


ーなるほど。


そこでずっと揺れていたんですけど、(コロナ禍の)自粛期間になって、みんながイレギュラーな生活を強いられるようになり、SNSも殺伐としていくのを見た時に、自分自身誰かが作った作品やコンテンツにエネルギーをもらっていることを実感して。私も小さくてもできることをやろう考えた時、自分には音楽しかないな、歌を歌いたいなという気持ちが自然と湧いてきて。そこから曲作りに本腰を入れて行きました。





■ 平熱に近い声


ー他の楽曲のセレクトは、どんなことを意識しましたか?


「walkin’」を作っている最中によく聴いていた曲を多めに選んでいったんですけど、結構サウンド面で参考にしたものが多いです。


ーmaco maretsあたりは近いニュアンスを感じました。



バンド時代には自分がこういうサウンドの音楽をやるとは全く思わなかったんですけど、普段聴くのはこういったテイストが多くて。今回パーシーさん(Toshiki Hayashi(%C))から音をもらって、ラップにもチャレンジするってことで参考音源としていろんな方の音源を聴いていました。どうやってサウンドと言葉をマッチさせているのかなとか、そういった視点で聴き直していく中で、沢山発見がありましたね。


ー赤頬思春期やRed Velvetのような、韓国出身のアーティストも印象的でした。これも池田さんがリスナーとしてアンテナを張っているところなんでしょうか。


私はまだあんまり韓国の音楽シーンには詳しくはないんですけど、今お手伝いしてくれているユキさんって方とどういう音楽を作るか話し合う中でプレイリストを交換したりしていて。そこで知った音楽が多いですね。ただ、赤頬思春期の「Galaxy」は自分で見つけた楽曲で、声が凄く好きです。彼女は自分の声をわかっているというか、歌声を初めて聴いたときにとても衝撃を受けました。



ーというのは?


私も自分の声の活かし方を凄く考えていたんですよね。ずっとPOPSをやってきたので、いかにはっきりと明るくわかりやすく歌うかを考えていたんですけど、そうではないアプローチをしようとする中で、自分の声だからこそできること、できないことを考えていました。前半の女性が続くエリアは、そういう聴き方をしていた楽曲が多いですね。


ー彼女達の歌を聴きながら、自分ならどう歌うかを考えていたと。


そうですね。みなさん凄く声に特徴があって、たとえばLana Del ReyとかNaoって、凄く表現の幅が広いというか、太めの声も少女のような可愛い声も同じ曲の中で行き来しているんですよね。日本で言うと椎名林檎さんはそういう幅の広さを持っている方だと思います。自分はこの声がコンプレックスだった時期もあって、カッコいい感じのものにはなかなかマッチしないなと悩んでいたときもあって。


ーなるほど。


なのでNaoさんのように、基本的には凄く可愛い声質なんだけど、一曲通して聴いた時にはクールな質感でまとまっている歌を聴いて、どうやったらそう聴こえるんだろう?って分析して。何か盗めていると信じたいですね(笑)。



ー実際「walkin’」での発声の変化は印象的でした。


漠然とですけど、作っている時から力を抜いて歌ってみたい気持ちがありました。バンドの頃はキーも高めに設定して、全力で構えないと歌えない曲をやっていたので、もうちょっと自分の平熱の声で歌ってみたいなと。で、さっきお話した通りスタンダードな、クールな雰囲気のラップは私の声ではハマらなかったので、宅録でいろいろ試していって。ウィスパーっぽい方向で作ってみたら“これいいかも”って思える感覚があったので、「walkin’」はそういうところから段々とまとめていきました。


ーただ、選ばれた楽曲では「walkin’」とは異なり、なんとなくラブソングが多い印象も受けます。


あ、それは偶然ですね。確かに世の中には恋愛の曲が多いと思うんですけど、自分が曲を作る時にはラブソングを書こうとはならなかったですね。自分が恋愛の曲を書くっていうのが今はあんまり想像出来なくて…と言いつつもしかしたらすぐにそういう機会が来るかもしれないし、わからないですけど。


ー今は違うところに目が行きます?


たぶん生まれ持った性格もあると思います。もちろん恋愛に対してもいろんなことを考えるんですけど、今は“自分ってなんなのか”とか、“世の中ってなんなのか”、“なんでこういう価値観が普通になっているのか”ってことに興味があって、そこに向き合いたい気持ちが強いのかもしれないです。ただ、これから作る曲がどうなってくのかは自分でもわからないので、どういうふうに変わっていくのかは楽しみですね。


(『DIGLE MAGAZINE』編集部 文:黒田 隆太朗/写:木村篤史/編:久野麻衣)


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