
【後編】THE CHARM PARKが綴る祈りと夢。飾らない歌の背景に迫る|DIGLE MAGAZINE
DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。
(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)
今回はTHE CHARM PARKが登場。後編をお届けします。
■ ずっと夢見る人でありたい
ー「祈り」はHemenway時代の楽曲で、東日本大震災をきっかけに書いた曲ですよね。
そうです。3.11の時、自分は日本で引っ越しの日だったんですよね。カルフォルニアもアメリカでは地震が多いほうなんですけど、当然経験したことのないような出来事で、今年起っているパンデミックも経験したことのない人がほとんどのはずだから。
ーそうですね。
何を歌おうかと思った時、ファンクラブには Hemenway の時代から好きでいてくれているファンの方もいますので、この曲は一番ふさわしい曲だと思って久しぶりに歌いました。こうした出来事を前に、自分がいかに無能であるかを感じてしまう。その悔しさというか、あまりにも力がない中、どうすればいいのかっていう悩みを表現した曲で。それでも希望はあるようにって祈りを込めて作った曲なので、今改めて歌えてよかったと思います。
ー楽曲の背景は異なると思いますが、「Dreamers」にも諦めないで生き抜いてほしいっていうメッセージがあるように思います。
そういうマインドは、できるだけ持つようにしてますね。なるべく暗くならないようにしたいです。
ー逆に言うと、暗くなってしまう自分がいる?
そうですね。僕のツアーが2月に終わって、当初は制作に移ろうと思ってたんですけど、ちょうどその後Covid-19の自粛が始まってしまって。しばらくは曲を作っていたんですけど、時間が経つにつれて出来てくる音楽が暗くなっているような気がしてしまって。今は制作をやめているんですよね。落ち込みやすい時期だからこそ、なるべく自分に対しても周囲の人に対しても、明るく希望を持つようにしています。
ーだからこそ、曲に託しているものは大きいかもしれないですね。
ファンクラブの名前も「Dreamers」にしたので、この曲は一番ピンと来るものがありました。僕はこれからもずっと夢見る人でありたいです。「Dreamers」を書いた頃もそうだったし、今も夢を見続けているから。ファンの皆さんもそうであってしてほしいという気持ちがありますね。今は細かい予定や目標を立てづらい時期ですが、自粛が終わった頃に色んな音楽をお届けできればいいなって思います。
ーファンに支えてもらっているような実感がありますか?
それは本当にありますね。たとえばファンクラブの月会費だったり、現実的なところで言ってもそれはあります。こういう世の中なので、よっぽど好きじゃないと入ってくれないと思うので、凄く感謝しています。そういう人達を大切にしようと思っている自分がいますね。
■ 人間らしい音
ーソロになってからの音楽は、バンド時代とは異なりオーガニックでやわらかいサウンドが前に出てくるようになりました。そうした音楽性がソロアーティストとして一番しっくりきたのは何故だったと思いますか。
簡単な答えを言うと、自分の声に一番合ってたんだと思います。つまりそれが一番自然だったということですね。今の日本も含めて、世界にこういう曲があったら良いいなって思える曲を書いているので、自分が聴きたい曲を作っているんですよね。
ー録音もご自宅でやられているということで、そうしたアットホームな空間だからこそできてくる音楽というところもありますか?
絶対そうだと思います。歌もスタジオで録ってみようと思ったことは何回かあったんですけど、窓の向こうに人が待っているし、エンジニアやディレクターがいて、自分の録ったものを判断している人がいると思うと上手く歌えないんですよね。そこで録る曲の音質がどれだけ良かったとしても、それ以上のものを家で得られているような気がします。
ーリスナーとしても演奏する人間としても、音楽が身近なものであるほうがしっくりくるのかもしれないですね。
音楽に関しては家にいてもいろんなことができる時代ですよね。僕の音楽はオーガニックというよりも、人間らしい音が部屋で鳴っているような気がします。ピアノも調律を綺麗にして弾くよりも、部屋に置いてあるピアノで演奏したほうがしっくりくる時があるんですよね。今流行っているLo-Fiの音楽とか、ベッドルームポップというジャンルの音楽もそうだと思いますけど、未完成なところを武器にしている気がして自分にはそれがしっくりくるんですよね。
ーこれからどんな曲を書きたいと思っていますか。
今はバックグラウンド・ミュージックが興味深いですね。曲を流しっ放しにしながら違うことをやっていてもいいような、そういう音楽が必要だと思います。これまではどっちかって言うとメッセージを伝えることだったり、音楽のダイナミクスを聴かせることをやってきましたが、実は今年はBGMになる音楽をコンセプトにアルバムを作る予定だったんです。
ーコロナ禍になる前から?
はい。トラック1から最後まで鳴らした時に景色がよくなるような、聴く人の意識を邪魔しないような音楽を作りたかったんです。そのイメージで作ったのが「ad meliora」で、聴いてくれる人を心地よくしたいと思っていました。なのでそうした作品を楽しみにしてほしいと思っています。
ー今はアンビエントの人気も高まっていますよね。
最近の若い子達って、サビを必要としない傾向があるらしくて。30代になった僕としてはその感覚が新鮮なんですけど、そうなんだなって思いました。日本ではまだそこまでじゃない気がしますが、世界的には声も張らずにサビもなく、ずっと繰り返されるフレーズをそんなに速くないテンポ感でやる音が増えている気がしますね。
ーただ、ある意味世界のトレンドと日本のトレンドの重ならない部分も感じている?
そうですね。僕はそれが不思議でしょうがないです。最近は時間がある分海外のコンテンツとか映画、ドラマをよく見ていたんですけど、凄い良いものでも日本では小さい劇場とかでちょっと公開されただけだったりして。全然違う世界なんだなって思います。
ーご自身の楽曲を作る時には、海外のトレンドと日本人の感性の両方を考えて、Charmさんなりのバランス感覚の中で作っているところはありますか。
今まで僕がそういう音楽を求めていたところがありますね。日本の独特なメロディとコードのニュアンスがあって、でも空気はアメリカやイギリスのようなものというか。それが混ざったら最高じゃないかっていう、自分の勝手な想像で作っています。それで共感してもらえたら嬉しいし、できなかったらしょうがないなっていうそんな気持ちです。僕がJ-POPを作りますってなったら、歌詞も含めて日本の方より上手く作れないと思うし、かと言って僕がここでアメリカの音楽をやりますって言っても変な話だし、僕は自分のことを間にいる人間だと思っているので、これからもそういう音楽を作っていくんじゃないかなって。自分しか作れないものを作っていきたいですね。
(『DIGLE MAGAZINE』編集部 文:黒田隆太朗/写:遥南碧/編:久野麻衣)