【後編】自由を謳歌するYeYe。独立独歩で始まった10年と、変わり続けるこれから|DIGLE MAGAZINE

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2021/06/11 18:00

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DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンメディア『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。

(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)


今回は京都を拠点に活動するシンガーソングライター・ YeYeが登場。後編をお届けします。





■ 母になったYeYeの変化

ー音楽を始めた頃、音楽的に影響を受けていたものはなんですか?


  空気公団  とか  ANATAKIKOU  、  advantage Lucy  とか  Belle And Sebastian  を凄く聴いてました。日本語で歌うと空気公団が凄く影響受けてるなって感じますし、ANATAKIKOUのメロディの作り方とかもそうですね。そこからFeistが好きになって、彼女の歌い方にも影響を受けたと思います。



ーFeistはどういうところに惹かれてますか。


声が唯一無二。しかも深みのある声で人を惹きつけるのに、その上歌が上手いだけじゃなく、Feistにしか弾けないギターを弾くっていうところがいいですよね。一時期Feistになりたいって思ってる時がありました(笑)。


ーRex Orange Countyと東郷清丸は面白いセレクトだなと思いました。


  Rex Orange County  さんは最初DAWAさんのプレイリストで知ったんですけど、めっちゃ曲を作りまくってるのに当時はCDを出してなかったんです。アルバム三作分くらい出てるのに出さないっていう、そのトガってるスタイルがカッコいいなと思ったし、周りに左右されないメロディが凄く自由だと思ったんですよね。



ー東郷清丸は?


清丸は曲も好きですし、1回彼のツアーで対バンさせてもらったことがあって。それ以後向こうにも子供が出来たりして、このぐらいの歳のミュージシャンで親になってる人達って周りにあんまりいないので、そういう意味でも共通点があってそれから連絡を取り合うようになったんです。あと、清丸はまずジャケットに凄い衝撃を受けたんですよね。崖の上に立って構えてる画を採用してる時点でそのセンス大好きって思って、最初は個人的なファンとしてCDを買っていました。



ーなるほど。


それから彼の活動を知っていって。正社員として働いている会社から自分のCDを出したり、とにかくやってることが所謂「音楽やりたい、じゃあレコード会社に送ろっかな」っていうやり方とは全然違うじゃないですか。全然状況は違いますけど、自分もスタッフを自ら雇ったり、割と自由にやってきたので。


ー活動面でも生活面でも通ずるところを感じていたと。


周りと違うやり方をするのって、エネルギーが要るんですよ。それを自ら買って出るのはカッコいいなって思いますし、そういうところにシンパシーを感じて尊敬しています。


ー子供のお話が出てきましたが、出産されたことも活動の大きな変化だったりはしますか。


出産は凄く大きかったです。物理的にその時はお腹も出てきて痛くもなるし、初めての出産だったのでいろいろびびって、今までみたいにスタジオに入ったり、全国にライブをやりに行くこともできなくなったから。私は割り切って考えて、最初の2年は子育てをメインに楽しもうと思ってたんですけど、その制限されていた自分が結局苦しかったんですよね。で、そこでめっちゃ曲作りたいって思ったんです。


ー音楽を求めていた自分を認識したんですね。


メンバーにも「なっちゃんはやっぱりミュージシャンだったんだなって思って安心した」って言われましたね。それまでは曲作りってあんまり好きじゃなくて、ライブが好きだったんですよ。今もそうだけど、私は歌うことが自分の中で一番だから。なので曲を作りたいってまず思う気持ちが自分の中から湧き出るのは、子供が生まれなかったらなかったことやろうなって思います。今年の6月から保育園に行き出して、自分の時間が2、3年ぶりにできていて、この時間が本当にありがたいですね。


ー母としてのYeYeとミュージシャンとしてのYeYeって、ご自身の中で分かれているものですか?


分かれているっちゃ分かれてるし、地続きっちゃ地続きですね。ただ、私は子供を生き甲斐にしたくないと思っているんです。それぞれの人生やし、親として子に求められることを最大限サポートはし続けるけど、息子には自分の人生を生きて欲しいし、そのためにも自分が人生を楽しんでいるところを見せたい。


■ “舐めんな”って気持ちが再燃している

ーアルバムタイトルが『ひと』だったり、新作の『30』にも「暮らし」という曲がありますが、YeYeさんって生活のなんでもないものを曲にしてるイメージがあるんです。


英語で歌う曲が多かった時期は歌詞ってあんまり重要じゃなくて、音とかメロディを作ることが楽しかったんです。それで「うんざりですよ」はメルボルンに住んでいた時に作った曲なんですけど、これ最初は恥ずかしかったんですよ。



ー恥ずかしい?


この曲には自分の価値観とか感情が入っているから、こんなにも自分を曝け出すなんて恥ずかしいって思ってたんですよね。でも、『パラサイト-半地下の家族』の監督の師匠が、「私生活こそが最大のクリエイティブだ」みたいなことを言ってて。そのコメントを見たのは『30』の制作後だったんですけど、ちょうど私も「暮らし」や『30』を作っている頃から、もう“全部出してしまえ”って思っていたので。今までは「自分は普段は普通に生活してまんねん」みたいな感じを分け隔てて考えていたけど、もう全部自分でいいし、全部YeYeでいいし、全部出してしまえって今は思っている。次にリリースする曲は今までよりもグッと歌詞が入った感じになると思います。


ー音楽的にはどういうことをやりたいと思っていますか。


音楽的には、やっぱり最初に言った通りですね。YeYeとしてはKings of Convenience的なオーガニックなことをやりながら、バンドはバンドでやりたいです。あと、今打ち込みの曲を作っているんですけど、とにかく時間があって曲を作るのが楽しくてしょうがない。最近はよく映画を見に行ってるんですけど、ピアノで曲を作りたいと思っていたので、映画を観て歌詞を書き、ピアノで曲を作ってみたいです。


ーその先にある理想ってなんなんでしょうね?


自分が住みたい場所に住んで、好きなものや好きな人達に囲まれて音楽をしていたいです。今もそうですが。それも全部Erlend Øyeの影響なんですけど(笑)…今彼はイタリアのシチリアに家買ってるみたいで。インスタのストーリーで見たんですけど、そこに写る家がえげつなくて。この広場何用?みたいな。『Call me by your name』の映画のあんな家やったんですよ。朝食をテラスみたいなところで食べたりしていて凄いなって。自分の中の最終的な理想も、外国に住むことですかね。


ーこれからどんな風にファンと繋がり、どんな発信をしていこうと思っていますか。


以前リトアニアでライブさせてもらった時には、クラウドファンディングして向こうへ行ったんですけど。リトアニアに行く為に作った曲のコーラスを、当日会場にいる人達の声で録って1枚のCDにしてリトアニアの人に配ったんですよね。その時はライブでせーので録りましたけど、今はみんなiPhoneのボイスレコーダーを持っているから。また違う国でも誰でも歌えるようなフレーズのコーラスを投げて、ファンの方から声を集めて、それを全部ミックスした楽曲を作りたいと思いました。


ーそうやって国境を超えていくと面白そうですね。


歌詞について考えると難しいと思いますけど、音楽だけで考えたら余裕で超えられると思います。台湾で一度ライブさせてもらったり、リトアニアやメルボルンでも何回かライブをしたことがあるんですけど、英語で歌うのも日本語で歌うのも皆関係ないやなって思いました。最初は劣等感とか自信の無さがあったんですけど、凄く受け入れてくれて、伝わるもんは伝わるんだなって思います。


ーどんな人に音楽を届けたいと思っていますか?


そうだなぁ…「暮らし」や「うんざりですよ」をリリースした時、自分が歌として言語化した気持ちを、拾ってくれる人がいるんやってことが衝撃だったんです。歌詞は家で椅子に座って書くよりも、私は電車やバスに乗るとずっと人や風景を見ていて、そこで浮かんできたものを書くことが多いんですけど。私がひとりきりで見た風景から受け取った感覚を、曲を聴いたリスナーも同じように感じてくれることが嬉しかったんです。言葉にできずにモヤモヤしてしまうことって誰にでもあると思うので、私の曲がそういう人達のひっかかるヒントになればって思います。


ー活動を始めた頃に抱いてた“舐めるな”って気持ちは、10年経った今でもありますか?


今、“舐めんな”という反骨精神が再発してるんですよ(笑)。当時は「歌を聴いてくれよ」って思ってたんですけど、今は「曲を聴いてくれよ」って思っています。


ー誰に対する“舐めんな”なんですかね?


結局自分自身なんでしょうね。自分が思い描いている目標みたいなものに、死ぬまでに辿り着きたいから。自分で自分のケツに火つけて、ずっとグルグル周ってる感じですかね(笑)。


(『DIGLE MAGAZINE』編集部 文:天野史彬/写:後藤倫人/編:久野麻衣)


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