ファンクラブを実験の場に。絶えず変化を続けるバンド・daisanseiが語る新作のビジョン|DIGLE MAGAZINE

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2023/10/13 17:30

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<目次>
▶︎  バンドの記録を残すためのファンクラブ
▶︎  中村佳穂、永原真夏、台風クラブ…バンドに刺激を与えるアーティスト
▶︎  たった一人に向けて作った曲のほうがたくさんの人に刺さる

 

DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンプラットフォーム『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。今回は、daisanseiが登場。

(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)

 

 


 

 

ソングライターである安宅伸明(Vo / Gt)による、キャッチーだがひとひねりが効いたポップ・ソングに、まるで花を添えるようにささやかかつ煌びやかなアレンジを加えていくバンド、daisansei。2023年はメンバー脱退も経て、安宅、脇山翔(Key / Ba)、フジカケウミ(Vo / Key / Ba)と3人体制となった中、5月21日にBitfanにて公式ファンクラブ『daisanseiの大実験ラボ』が開設された。また1stアルバム『ドラマのデー』(2020年)以来となる3年ぶりのフルアルバム『彼は紫陽花の行方』を11月に発表することもアナウンスされている。

 

2022年は曲調の幅の広がりを感じる4曲をまさかの8cm CDで発表した『root you』、フジカケがボーカルを務める表題曲で新たな普遍性の獲得に挑んだEP『花々』と、いずれも挑戦的な変化を伴った作品を発表してきた。そこに加えて美しい跳躍が描かれるアルバムとなるに違いない。そしてこのファンクラブもバンドの新たな動きをいち早く察知できるような実験場所になることだろう。

 

今回のインタビューではそんなdaisanseiの3人に、ファンクラブのことと、来るべき新アルバムに向けた現状のモード、そして「刺激を受ける同世代アーティストの曲」をテーマに用意してもらったプレイリストについて話を聞いた。

 

 

 

 

 

バンドの記録を残すためのファンクラブ

ーーファンクラブ『daisanseiの大実験ラボ』ができたことの感想からお聞かせください。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
自分は昔、くるりのファンクラブ(オフィシャルサポーターズクラブ「純情息子」)に入っていたんですけど、チケットが先行で申し込めるとかが魅力じゃないですか。でも出身が秋田なので、なかなかライブに行ける環境ではなくて。それでも入っていたのは岸田繁さんの熱いブログが読めたからだったんです。しかも自分がくるりを知る前の投稿も残っていたから、ずっと遡って読んでいました。だからちゃんとバンドの記録を残せる場所ができたのはいいなと思っています。

 

ーー5月21日に開設されて、今は3人やスタッフの方が書いたブログや、ファンクラブ限定のライブ動画、アーティスト写真のギャラリーを観ることができます。具体的にこの場所ではどんなことをしたいですか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
全員で決めていくというより、3人それぞれのやりたいことを持ち寄ったほうがいいと思っていて。僕はちゃんと音楽面を見せるようなことをしたい。作曲しているところを配信したり、曲作りの過程について書いたり。普段のTwitterがご飯の写真を載せたりふざけてばかりなので、ここでは真面目に「ちゃんと俺が曲を作っているんだよ!」という面を伝えられたらなと。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
私はMVやアーティスト写真で自分たちの服装を考えたり、グッズの制作にも少し関わったりしているので、その裏側というか、どんな考えを持って作ったかを伝えていきたいと思っています。私が歌っている「花々」のMVでそれぞれメンバーが立っている場所に花が置いてあるんですけど、それは私がみんなのイメージに合わせて選びました。その背景や、普段のバンド活動では見せることができないところを出していきたいです。

 

 

安宅伸明(Vo / Gt):
この前はあじさいの管理方法を書いてた。お花屋さんのブログみたい。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
以前、お花屋さんで働いていたので好きなんですよね(笑)。次にグッズでタオルを作ろうとしているんですけど、私がミシンでタグをつけようと思っていて。その過程をブログに書くのもあり。

 

ーー音楽面ではなくても、daisanseiに関わるクリエイティブの背景が知れるのは確かにファンにとって嬉しいですね。

 

脇山翔(Key / Ba):
こちら側がワクワクしながら作っていても、外からはなかなかその楽しさが伝わりづらいことがたくさんあって。グッズ一つとっても、この前プラスチック板を機械で切る作業を見ていてすごく面白かったんです。そういうのも気軽に共有できたら、ファンの方も一緒にワクワクできるかもしれません。

 

 

ーーまた現在公開されているコンテンツでは、たくさんデモ音源を聴くことができる『でもでものデー』のページが楽しいですね。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
これまでは自分がCD-Rに焼いて、物販で売っていたんですけど、今後はこの場所に切り替えてどんどんあげていこうとしています。

 

ーーここにはどういうデモがアップされるのでしょうか? これからバンドでやる予定の楽曲?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
いや、むしろdaisanseiではやらないだろうという曲をたぶんあげていく気がします。最近はデモを作った段階で、なんとなく線引きがわかるようになってきて。バンドでアレンジするような曲ではないけど、僕にとっては「お前なんか変な形していて、かわいいな」という愛すべき曲たちが輝ける部屋、という感じですね。

 

ーー確かに音頭調の「あした天気になれ」や、かたつむりの特徴を述べていく「でんでんまいまいレーシング」など、びっくりするような“変な曲”がたくさん。そのバンドでやるだろう曲との線引きについて、言語化することはできますか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
うーん…やはりちゃんとサビがあってキャッチーで、バンドでやるとアレンジがよりよい形に変わっていくことが見える、ということでしょうか。ここにあがっていくデモたちは、もうこのままの姿が愛くるしいんです(笑)。だからここにしまっておくよと。

 

ーー今は少し違うなと思っても、また時間が経って振り返ったらアレンジのアイデアが出てきて、完成するようなことはないのですか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
過去に作ったデモを遡って取り上げることで、いい曲に仕上がった試しがなぜかないんですよね。おそらくまだ僕たち、成長途中だからなんだと思います。このバンドを始めたことが僕の音楽歴の全てなので、今もいろんな経験を積んだり、少しずつやり方がわかってきたり整理されてきた段階。だから過去の自分が作ったデモはなんか常に物足りないんです。

 

 

 

中村佳穂、永原真夏、台風クラブ…バンドに刺激を与えるアーティスト

ー常に最新の曲が、過去を超えてくるものになるのは素晴らしいですね。さて今回は「刺激を受ける同世代アーティストの曲」をテーマに3人それぞれ選曲していただきました。選んだポイントを伺えればと思いますが、脇山さんが選んだのは永原真夏「片目のロックスター」、結束バンド「星座になれたら」、一人一人のスースー「あなたの歌は最後にするね」です。

 

 

脇山翔(Key / Ba):
ご縁あって、ライブなどでご一緒させていただく中で刺激を受けた方の楽曲を選びました。永原真夏さんは2023年2月に今の体制での初企画イベントでツーマンをさせていただいたり、要所で対バンをしているのですが、本当にリスペクトしています。聴いている人に何かを届けたい、与えたいということの使命感を感じるというか。そんなエネルギーを特に感じる曲として2ndフルアルバムから「片目のロックスター」を選びました。

 

束バンドのこの曲は作詞がヒグチアイさんなんですが、2022年6月のイベントに声をかけていただいて対バンしたり、ヒグチさんのラジオにも安宅さんとフジカケさんを呼んでもらいました。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』も好きなんですが、この曲は登場人物への寄り添い方がすごい詞で、ちょっと泣きそうになっちゃいます。

 

最後の一人一人のスースーは自分たちと同じく下北沢で活動する同世代のバンドとしてすごく刺さった曲です。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
私は4曲選びました。アロワナレコードは少しだけ年下の何度も共演しているバンドですが、とにかく曲がいい。選んだのは「シーモア」ですが、本当にパワーをもらえるライブをするので、ここから他の曲も聴いてもらいたいです。

 

他のアイナ・ジ・エンドさん、きのこ帝国、中村佳穂さんの曲を選んだ理由は共通していて、自分らしくて、歌として自然体の魅力がすごいと思う人たちです。こんな風に私もステージに立ちたいと、憧れの意味を込めました。私が歌っている「花々」は家で録音していたんですが、何テイクも歌を録り直していて、そのうち正解がわかんなくなって自信をなくしてしまうほど苦しかったんです。そのときに中村佳穂さんが「そのいのち」を歌っているライブ映像を観ました。曲に入る前にアドリブで歌っている部分があるんですけど、自由でいいんだよって背中を押してくれた心地になってしまって。泣いてしまうくらい感動しました。

 

 

ーそして、安宅さんが選んだのは台風クラブ「下宿屋ゆうれい」、ザ・おめでたズ「三途のリバーサイド」、グソクムズ「すべからく通り雨」の3曲です。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
このテーマをもらって、まず「刺激とは何か」と考えたときに、曲を作りたくなるということだなと。そもそも他の音楽を普段からそこまでたくさん聴くような人間ではないので、正直難しかったんですが、その中でも聴いた瞬間に「めっちゃいい! 俺も作りたい!」と思った完璧な3曲ですね。

 

ーいい曲を聴くと、曲を作りたくなるというのはどんな心境なのでしょうか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
「ずるいなぁ~」というか、俺もこの曲を作りたかったという気持ちになるんです。でも絶対に真似できないから、自分なりに作るしかない。

 

ー2022年時点の別のインタビューでは、「対バンに食らっちゃうことが多いので、ツアーをやると嫉妬がたまっていく」と仰っていましたが、少し受け止め方は変わったんですか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
元々が引っ込み思案の目立ちたがりなので、ステージに立つような人間じゃないんです。周りはすごいな、自分は向いてないなと思いながらやってきましたが、さすがに慣れてきた。その気持ちは最近なくなってきましたね。心の余裕が少し出てきたのかも。誰がどんなことをしてようが、自分はちゃんといいライブしよう、いい曲作ろうと思えてきました。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
確かに段々とライブの日のお酒の量は減ってきたと思います。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
前までライブするまで手が震えてたしね。

 

ー余裕が出てきたのは何かきっかけがあったのですか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
最近はライブでエレキギターを弾かなくなったことが大きいかも。今までバンドアンサンブルの中で自分のエレキがどこに位置するべきで、どういう音を作ればいいのか本当の意味ではわかってなかったんです。だからここ一年ほどはアコースティックギターに変えてみたんですけど、アコギでいい音を鳴らすには腕や体の使い方の部分が大きいから、気にするポイントが少なくなって歌に集中できるようになったというのはありますね。

 

 

 

たった一人に向けて作った曲のほうがたくさんの人に刺さる

ー今年の1月に小山るい(Gt)さんが脱退されて、バンドは3人となりましたが、今ライブはどのようにやっているのですか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
脇山がベースでフジカケは歌、フジカケがベースで脇山がピアノ、あとサポートもドラムやエレキギターに入ってもらうこともあるので、本当にいろんな編成でやっています。

 

ーそれはこの3人体制でのライブのスタイルを模索している時期という感じなんですかね?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
なんかそれも少し違うような…。

 

脇山翔(Key / Ba):
正直このバンドが始まったときから、メンバーはずっと変わり続けていて。この3人になったからどうしようという感覚ではないというか。僕たちは特別にこの楽器が上手いという人もいないので、今このタイミングで楽曲が輝くにはどういう音を誰が演奏するのがベストか考えながらやっているだけです。だから極端な話、メンバーが変わることは大した問題と捉えていなくて。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
そう。ずっと新体制みたいな感じです。

 

ーでは今は11月に予定されている2ndフルアルバムと、12月16日(土)に開催されるワンマンライブ <氷のとけるまえに>に向けてベストを尽くそうとしているというのが実態にあっているんですね。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
はい。まだアルバムの曲も全部揃っていないので、必死に作っています。

 

ータイトル『彼は紫陽花の行方』がすでに発表されていますが、コンセプトやサウンドのテーマなど、現時点ではどんな作品になりそうですか?

 

脇山翔(Key / Ba):
そのときに安宅さんが作ったいい曲をまとめるというのは、1stアルバム『ドラマのデー』(2020年)から変わらない。ただ今回はすごくパーソナルな曲が増えてくるのではないかと予想しています。今、テーブルに並び始めた食材がそういう風合いということでしかないんですけど。

 

ー2022年の3曲入りEP『花々』は以前よりも外に開けた普遍性のあるポップ・ソングが並んだ作品という印象がありました。今回はどちらかと言えば逆に向かおうとしているんですね。

 

脇山翔(Key / Ba):
安宅さんと以前、話していたんです。誰かたった一人に向けて作った曲のほうがたくさんの人に刺さるのではないかと。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
確かに。だからなんだか寂しげな作品になりそうな予感がします。最近改めて創作ってどこまでも孤独な行為だなと思うようになってきて。いろんな人が関わってくれていますが、最終的には自分とどれだけ向き合えるかにかかってくる。そこに気づくと冷静になって、孤独に対してもドラマチックに感じなくなってきた。だから今、とことん創作に向き合えそうな気がします。でもそれって俯瞰すると寂しいことだよなぁという複雑な循環をしておりまして…。

 

脇山翔(Key / Ba):
めっちゃムズいこと言っている。

 

ーフジカケさんは新作についていかがでしょうか?

 

安宅伸明(Vo / Gt):
お花に例えてお願いします。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
そんな、難しい難しい。

 

脇山翔(Key / Ba):
でもひまわりとかバラではないよね。

 

フジカケウミ(Vo / Key / Ba):
そうですね…お花屋さんに並んでいる感じではない。道端に小さく咲いているような身近な存在に思える曲が並びそうな気がします。『ドラマのデー』は本当に色とりどりだったから全然違うものになるかと。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
確かに同じ部屋にいる曲たちって感じがする。『ドラマのデー』はおもしろアパートメントだった。集合住宅で起こる短編連作ミステリー。

 

脇山翔(Key / Ba):
それで言えば全曲、生の楽器でレコーディングする気はしますね。その音が鳴っている空間も含めて解像度高く伝わるようなものになればいい。

 

安宅伸明(Vo / Gt):
そんなこと言いながら、でき上がりは全然違うものになっているかもしれない。原色の絵の具をキャンパスに叩きつけて作りましたとか、一発録りの1曲40分のコンセプトアルバムとか。daisanseiの大問題作(笑)。ご期待ください。

 

 

 

 

■Profile/daisansei(だいさんせい)

東京を拠点に活動する3人組バンド。メンバーは、安宅伸明(Vo / Gt)、脇山翔(Key / Ba)、フジカケウミ(Vo / Key / Ba)。安宅が2019年にネット掲示板でバンドメンバーを募集したことがきっかけで、脇山と知り合い、同年夏ごろにバンド「大賛成」を結成。その後、フジカケが加入し、名義を「daisansei」に変更した。

 

2020年11月には、フルアルバム『ドラマのデー』をリリースし、タワレコメンやSpotifyのプレイリスト『Early Noise Japan』にも選出されるなど注目を集める。さらに、2023年5月21日にBitfanでファンクラブ『daisanseの大実験ラボ』を開設。11月8日(水)には、2ndフルアルバム『彼は紫陽花の行方』をリリース予定で、12月16日(土)にワンマンライブ <氷のとけるまえに>の開催も控えている。

 

「なんでもない毎日に捧ぐ、ささやかなドラマチック」を掲げ、日常に埋もれてしまいそうな小さなきらめきを少しでも取り戻せるようなポップソングを作れるよう活動を続けている。

 

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(文: 峯 大貴  写:澤田 詩園  編:riko ito)

 

daisanseiの大実験ラボ | Bitfan

 

 

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