“絶望音楽”で人気を博すボカロP・Sumia。ファンクラブ開設を機に強まったリスナーへの想い|DIGLE MAGAZINE

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2023/05/25 15:00

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<目次>
▶︎ 音楽との出会いはSkrillex。幅広いルーツの中で青春を長く共にしたボカロ曲
▶︎ ファンクラブ開設のキッカケはファンからの声
▶︎ 誕生日を迎えて新たな路へと向かうSumia

 

DIGLE MAGAZINEとオールインワン型ファンプラットフォーム『Bitfan』が送る、“アーティスト活動”にフォーカスしたインタビュー企画。アーティスト選曲のプレイリストと共に、これまでの道のりやファンとの関係について掘り下げます。今回はSumiaが登場。

(本記事は、DIGLE MAGAZINEに掲載された記事の転載です。)

 

 


 

 

“絶望音楽”という悪役に焦点をあてた世界観を展開する、ボカロP/作編曲家のSumia。2019年に楽曲制作をスタートし、同年に発表した「Isolators」でボカロPとしてデビュー。EDMやトラップ、エレクトロ系の要素を取り入れたダークなサウンド、ストーリー性があり言葉遊びを用いた歌詞で若い世代を中心に支持を得ている。また、歌い手やVtuberへの楽曲提供も多数手掛ける。

 

そんなSumiaのルーツは実に多彩で、Skrillex(スクリレックス)やAlan Walker(アラン・ウォーカー)、さらにはKARA、BIGBANGらK-POPも好んでいたという。ボカロ曲に留まらない幅広いルーツは、Sumiaが瞬く間に注目を集めた所以の一つなのかもしれない。

 

今回のインタビューでは、「Sumia’s ROOTS」と題したプレイリストと共にSumiaの音楽ルーツに迫る。また、今年2023年4月1日に開設したファンクラブ『Sumia’s WORLD』で挑戦したいことや、活動の展望についても伺った。

 

 

 

 

 

音楽との出会いはSkrillex。幅広いルーツの中で青春を長く共にしたボカロ曲

ーーSumiaさんは17歳の頃(2019年)から活動を始められたそうですが、これまで楽曲制作ではボーカロイドを使って制作してきて、いわゆるボカロPとして活動されてきましたよね?

 

そうですね。音楽に触れ始めた頃に聴いていたものは違いますが、小学校3年くらいの頃から当たり前のようにボカロがあって、友達のオススメもあって聴いて、自分でも曲を作り始めました。僕の青春時代を一緒に過ごした時間が長いのは、ボカロだった気がします。

 

ーーなるほど。今回『Sumia’s ROOTS』として10曲を選んでもらっています。一目見て驚いたのは、ボカロ曲が少ないことです。「青春時代を一緒に過ごした時間が長い」と仰っていましたが、3曲しか選んでないという。

 

たしかに長いあいだ聴き続けてきましたが、本当に好きだったり影響を受けてきたという意味では、ボカロに留まらないのかなと。K-POPやダンスミュージックもしかり、僕にとってはインパクトが強くて、大事なものとして心に残っていますね。

 

 

 

 

ーー曲順にも何か意味が込められていますか?

 

これは時系列順になっていて、1曲目から僕が出会った順になっています。1曲目のSkrillex「Kill EVERYBODY」に出会ったのは小学校4年か5年の頃ですね。ニンテンドー3DSでYouTubeが見れるようになった頃で、そこでいろんな曲を聴いていたら偶然出会ったんです。

 

ーーそうなんですね。大人ですら衝撃を受けていたくらいだったので、小学生が聴いたら大きなインパクトがありますよ(笑)。

 

しかも当時は中二病な気質があったので、ぶっ刺さりましたね(笑)。タイトルも含めてとにかくインパクトが強かったので、この曲を選びました。ほかにもAlan WalkerやKrewella(クルーウェラ)などを選んでいますが、こういったEDMやベース・ミュージックを聴くキッカケになりました。

 

ーー4曲目にボカロ楽曲として「脳漿炸裂ガール」が選ばれていますが、れるりりさんの曲ではなく__(アンダーバー)さんの歌ってみたバージョンなんですね。

 

これは友達が教えてくれた曲で、僕が初めて聴いたボカロ曲なんです。その友達が__(アンダーバー)さんがすごく好きで、「なんだこれ!?」と面白く聴いていました。そこがボカロを深く聴いていく入口になったんです。

 

ーーOwl City(アウル・シティー)の「When Can I See You Again?」やtwenty one pilots(トゥウェンティ・ワン・パイロッツ)の「Heathens」らも選ばれていますね。いわゆる王道なポップスを聴かれているんだなと。

 

この2曲はそれぞれ映画『シュガー・ラッシュ』(2013年)と『スーサイド・スクワッド』(2016年)の主題歌で、よく聴いていたんです。特に『スーサイド・スクワッド』はヴィラン(悪役)が中心となった作品で、最後に流れたこの曲に衝撃を受けて、家ですぐに調べて聴いたくらいです。映画自体もいま僕が生み出しているものにとても影響を与えているので、選ばせてもらいました。

 

ーー最後の2曲はsyudouさんと煮ル果実さんのお2人ですね。それぞれ選ばれた理由は?

 

syudouさんは僕が一番好きなボカロPで、ダークな曲といえばsyudouさんだと思ってます。ガッとインパクトを残すようなタイトルを毎回つけているのも好きですね。

 

最近僕の楽曲ではベースラインにピアノの音を使うことが多いんですが、これもsyudouさんの影響です。<The VOCALOID Collection ~2022 Spring~>(※ボカロ関連のクリエイター等によるイベント。通称ボカコレ)に今回選んだ「邪魔」のリミックスを制作して参加していて、とても思い入れがある曲ですね。

 

僕自身、物語性のある楽曲を作ることが多いんですが、煮ル果実さんの「ヲズワルド」はMVもストーリーが背景にあって、曲調も激しく展開していく曲ということでとても好きな曲なんです。

 

あとこの曲はボーカロイドにv flowerを使っていますが、僕がv flowerを好きになったキッカケの1曲でもあります。煮ル果実さんもsyudouさんと同じくダークな曲調を得意としている方で、代表曲として選ばせてもらいました。

 

ーー映画のお話がいくつか挙がりましたが、音楽以外ではどういった作品に影響を受けましたか?

 

映画や小説などが大きいですね。『ハリー・ポッター』シリーズがとても好きで、映画だけじゃなくて日本語訳の小説も読んでいます。ダークでシリアス、それでいてファンタジーな要素もあって好きですね。

 

あとは『僕のヒーローアカデミア』が好きで、ヴィランに焦点が当たっているというのが好みなんです。連載当初からいままでずっと読んでいて、「悪役にスポットを置く」というのを学んだのはこの作品からですね。

 

ーーそういった影響もあってSumiaさんはいま「絶望音楽」というコンセプトとしてダークな音楽を作っていますが、キッカケは何だったんでしょうか?

 

活動当初は作りたいように作っていたんですけど、だんだんと迷走状態になってしまって。その中で、一番しっくりきたのがダークな曲調だったんです。「これならいける!」と思ったのを覚えていて、ちょうど活動を始めて半年ほどだったかと思うんですけど、そこから踏ん切りをつけていまの路線で制作しています。

 

ーーいままで制作してきた中で、「これはきた!」と思えるような出来の曲を挙げるとするならどの曲でしょう?

 

最近の楽曲になりますが「クレイドル」ですね。実はこの曲は6~7時間くらいで出来上がった曲で、イメージや着想が頭の中で固まっていて、それを完璧に表現できた曲ですね。会心の出来だったなと思います。

 

 

ーーSumiaさんはこれまで一貫した世界観の中で活動をされていますが、活動において大切にしていることはなんでしょうか?

 

僕が作っているのはフィクションなんですよね。物語を作って音楽にしていて、それは誰かを救うというようなキレイな話ではないですし、僕が作りたいものを作っていて、楽しんでくれるリスナーがここまで増えてきました。最近はそういったリスナーの方々からの期待に応えられるような良い作品を作りたいと感じています。

 

実は日本のファンと海外のファンでいうと、ちょうど半々くらいなんです。僕のようなダークな作風は海外のほうがウケるんじゃないか?という肌感覚があって、「クレイドル」も海外からの人気が高い曲なんです。はじめはただ「ダークな作風」だったのが、徐々に「海外ファンにウケるダークな作風」へとシフトしていったんじゃないか?と思います。意識していたわけじゃなく、図らずともそうなったなと。

 

ーー例えばお仕事として「明るくてポップな曲」を求められたらどうしますか?

 

お仕事だったらやることがあるかもしれないですけど、僕からそういった曲を作るのは否定的になりますね。やはり「ダークな曲を作るのはSumiaだ」という風に思われたいですし、そこは負けたくないなというのがあって。大事にしていきたいと思っています。

 

 

 

ファンクラブ開設のキッカケはファンからの声

ー今年4月からBitfanでファンクラブ『Sumia’s WORLD』を設立しましたが、以前はどういった形でファンと交流を図ってきましたか?

 

LINE、Twitter、InstagramなどSNSを通じてこれまではコミュニケーションしていました。リプライには必ず返すようにしていますし、YouTubeのコメントにはハートマークを押したりなどしてますね。

 

ーすごくマメで丁寧な方だなと感じます。

 

コメントしてくれた方に何かしら返したいなと思っているので、自然とそうなってますね。

 

ー先ほど海外からの人気が強くて、日本のリスナーと比べてもちょうど半々とおっしゃっていましたが、海外のファンとコミュニケーションする際に、何か意識している点はありますか?

 

YouTubeのコミュニティにお知らせを出すことも結構あるんですけど、必ず英語の翻訳文をつけるようにしています。僕の楽曲動画にも字幕で英訳が載るようにしていて、海外の方にも歌詞を楽しんでほしいと思ってますね。日本人の僕らと同じように楽しめる環境作りは徹底しています。

 

ー話を伺っていると、Twitterなどを通じてすでにファンと交流できるプラットフォームがしっかりと確立されている中でファンクラブを設立したわけですが、なぜ有料制のファンクラブを設立したのでしょう?

 

リスナーやファンからそういった場が欲しいというコメントがチラホラとあがっていて、その影響が大きいですね。やはりリスナーさんの声には応えたいという気持ちも大きくて、Bitfanのもとでファンクラブを設立するのが一番最適だろうと思い、開設しました。

 

ーなるほどです。開設にあたって「こういう機能が欲しい!」というようなプラットフォームに求める部分はあったんでしょうか?

 

僕はもともと文章を書くのが好きで、実は作家のような存在になりたかったんです。そういった意味では文章コンテンツがつくりやすいBitfanは僕に合ってるなと思います。今後文章コンテンツを出したいという気持ちが強かったので。

 

ーそれは小説家や文芸的な側面ということでしょうか?

 

そうですね。小説や絵本などを制作してみたいです。

 

ー文章コンテンツが増えていけば、小説や絵本を制作してみたりなどもありますか?

 

密かに抱いてます(笑)。やれるチャンスがあればぜひやりたいですね。

 

ーファンクラブ『Sumia’s WORLD』はまだ開設したばかりですが、開設したことでご自身の中で心境の変化はありましたか?

 

これまでの交流と違い、ちゃんとお金を払ってファンクラブに入ってくださっているので、それに見合ったものを提供したいという気持ちは強くなりました。

 

ーファンクラブの名前を「Sumia’s WORLD」にした理由はなぜでしょうか?

 

普段僕の楽曲のことを「Sumia’s SONG」と呼んでいるのですが、それと同じく僕の世界観のことを「Sumia’s WORLD」と呼んでいるので、その延長線で名付けました。

 

ー『Sumia’s WORLD』をどういった場所にしていきたいですか?

 

数多の活動者がいる中で、僕に辿りついてくれたのはホントに奇跡だと思っていて、そういった方々が対価を支払ってSumia’s WORLDに入って頂いている。だからこそ「応援してよかったな」と心から思える場所にしたいですね。

 

楽曲ではダークでファンタジーな世界観を表現していますが、ファンクラブの中ではブログと称してエッセイ風の連載をしているんです。あとは日常の風景などを取り入れつつ、『Sumia’s WORLD』ならではの世界観をここから作っていきたいと考えてます。

 

ーここまでお話しをしていて、ファンのことをすごく大切にしていらっしゃるのを感じられます。これまで日本や海外などとは関係なく交流を図ってきた中で、一番大切にしていることはなんでしょうか?

 

まずは「感謝の気持ちを伝える」というところですね。SNSでのツイートでは何かしらの報告が多めではあるんですけど、それに対して「おめでとうございます!」という声が多いんです。普段から無条件で音源を聴いていただけるファンもいらっしゃって、とんでもなく幸せ者だと思っているんです。

 

たとえ僕に向けてコメントをしていなくとも、出会ってくれたことや曲を聴いてくださったことに感謝するのは当たり前だと思ってますし、こちらからも「ありがとうございます!」という姿勢でいますね。

 

ーSumiaさんにとってファンとはどんな存在でしょう?

 

なくてはならない存在、間違いなく。僕の一部のように感じています。

 

ー今後『Sumia’s WORLD』を通してどういったことをやってみたいことはありますか? 

 

ファンクラブ限定の商品やグッズを制作したいなと常々思っています。グッズしかり音源しかり、文章コンテンツでもいいんですけど、このファンクラブでしか楽しめないものを作りたいと思ってます。

 

 

誕生日を迎えて新たな路へと向かうSumia

ー4月19日に新曲「BADDIE BUDDY BUNNY」がリリースされました。こちらは以前発表していた「クレイドル」や「カルネイジ」との繋がりがあるとのことですが、どういった部分でしょうか? 

 

「クレイドル」に登場するキャラクターに憧れている2人という設定がありますね。物語として何か繋がりがあるというわけではないですが、キャラクターの中に何かしらの共通点があるんです。なので過去の曲のリフが入っていたり、タイトルにひっかけた言葉が歌詞に含まれています。

 

 

ー「BADDIE BUDDY BUNNY」はこれまでと違った要素が感じられて、これまでで一番ポップな楽曲なのかもなと思いました。リリースが誕生日ということですが、あえてその日にぶつけた理由はなんでしょうか?

 

「誕生日だからこそ」と気合を入れるわけでもないですが、やっぱり僕の中では大きな節目だと感じてはいるんです。なのでそこでひとつ大きなアクションを起こすことは、自分の中で大事かなと思って、誕生日に新曲をリリースしようと思いました。

 

ーこの新曲はどういった方に届いてほしいと思っていますか?

 

先ほどの話にもありましたが、これまでの楽曲の要素が多くあるので、これまで自分の楽曲を聴いてくださったファンには聴いてほしいですし、新しい要素もあるので新たなファンに聴いてもらえれば嬉しいなと思ってます。

 

ー新たに誕生日を迎えたいま、目標や抱負などはありますか?

 

ちょっと現実的な話にはなりますが、フリーランスの音楽家として活動していく中でちゃんとした実績を積み上げていきたいですね。活動は全力で頑張ってファンの応援に応えつつ、同時にひとりの職業作曲家としての実績を残したいというのが、いま一番の抱負になりますね。

 

あとはセルフカバーをやってみたときに反響があったので、これまで制作してきたSumia名義のボカロ楽曲を自分自身で歌ってみるといったアプローチはやはり興味があります。

 

ー今後10年20年と活動が続いていったとして、最終的に成し遂げてみたい夢はなんでしょうか?

 

これはYouTubeでの話ですが、100万再生や1000万再生されるような楽曲を生み出したいですね。音楽家という目線でみれば、アニメや映画は僕のルーツでもあるので、そういった作品の主題歌や劇伴に関われたら嬉しいなと思っています。

 

(文: 草野虹  編:Miku Jimbo)

 

Sumia | Bitfan

 

 

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